第2章 別れ
いつからか、あなたの笑顔が暗くなった。
目を見ても暗がりを見せるようになった。
嘘が、下手になったのだと思う。
問いかければ嘘だって丸わかりの笑顔で言葉を並べる。
嘘だと指摘すれば、困った顔をして微笑むのだから、それ以上は言えなかった。
けど、今日は違うみたい。
触れた手はいつもより冷たくて、こちらを見つめる目は夜の空よりも暗くおもたい。
けれどどこか決意をした眼差しであったからつい見惚れてしまう。
教えてくれた。最近彼が暗かった理由を、嘘が下手になった理由を、涙を流しながら、目を赤くしながら教えてくれた。
抱えている苦しみを。
私には何も出来ないんだね、ただ今からあなたが辛い道へと進む背中を見つめることしかできないんだね。
そう突きつけられた現実は痛くて辛らい、けれど彼の痛みに比べればどうって事はない。
だからあなたが私に託していったものを私は守ってみせるよ。
安心して。
いつかまた会えたのなら…今度こそ、一緒に隣で涙を流すから。
あの満月の夜、木ノ葉を抜けたうちはイタチは木ノ葉隠れの里に二つの宝物を置いて去った。
一つは、一族と天秤にかけてでも守りたい弟のサスケ。
もう一つは、愛してやまない己の偽りをも見破る恋人。
夜空は綺麗で星々がキラキラと光っている、月も大きく月光が夜道を照らしている。
そんな夜空を見上げて涙を流す少女は、彼を想う。
これから会うことのない、愛しい愛しい、恋人を。
ここは彼が言っていた、親友との別れの場所だ。
こんな所で別れを告げるのは残酷だろう、しかし少女は別れを涙しているのではない。
これから待ち受ける彼の苦しみを、悲しみ、涙しているのだ。
一人、里の為に同胞を殺め、誉と知られることなく大罪人となる。哀れにも、立派で、尊い彼を思えば涙を我慢など出来ない。
「イタチ…わたし、ずっと、、待ってるよ…」
帰ることの無いその人に向けた、風にかき消されたその言葉。
受け取ってくれたのは月だけで、聞き流すのは風だ。
月が少女を照らし、涙を宝石へと魅せる。
幻想的で神秘的な、美しい少女は、涙を止めて、歩き出した。
この先の、物語へ。