第2章 想い想われ波乱万丈(桜月かりん様リクエスト作品)
「そう、だったのか。全部俺の勘違いだったんだ。本当にごめん・・・」
「いいのよ、もう。勘違いさせたあたしも悪いし、あんたにも不快な思いをさせちゃったわね。それに、楓にも」
嫌われちゃったかな。と悲しそうに目を伏せる汐に、炭治郎は首を横に振った。
「俺も一緒に誤解を解くよ。だから、そんな顔をするな」
「炭治郎。ありがとう。あ、そうだ」
汐は思い出したように顔を上げると、先ほど買った包みを炭治郎の前に出した。
「楓への贈り物を選んでいたら、その。偶然見つけて。ほ、ほら。あんたにはいろいろ世話になってるし・・・」
きょとんとする炭治郎に、汐はしどろもどろになりながらも言葉をつなぐ。
「だ、だから!これあんたにあげる!!」
顔を真っ赤にして包みを押し付けると、炭治郎の眼が輝きを増した。
「これ、俺に?」
「そう言ってるじゃない!」
「ありがとう、汐。開けてみてもいいか?」
汐が頷くと、炭治郎はすぐさま包みを開けると、そこに入っていたものを見て目を丸くした。
それは、太陽を見上げる一匹のねずみが形取られた根付だった。
「これを見た瞬間、あんたと禰豆子の顔が思い浮かんだの。で、気が付いたら手に取ってた。気に入ってくれるといいんだけど・・・」
「すごくいいな、この根付!まるで俺と禰豆子と汐みたいだ!」
嬉しそうに根付を眺める炭治郎の言葉に、汐の肩が大きく跳ねた。
「え?あたしも?なんで?」
「だってこのねずみがいる場所、海辺だろ?俺と汐が禰豆子を守っているみたいですごく素敵だ」
そう言ってにっこりと笑う炭治郎に、汐の胸はドキドキと音を立てる。この笑顔が見られたことが何よりもうれしく、汐の顔も自然とほころんだ。
「あ、そうだ!冨岡さんはどうしただろう。楓とちゃんと仲直りしたかしら」
「大丈夫じゃないか?冨岡さんだし」
「冨岡さんだから心配なのよ!こうしちゃいられない、様子を見に行くわよ!」
汐はパッと立ち上がり、炭治郎の手を引いて走り出す。炭治郎は一瞬だけ面食らうが、すぐさま汐の手を握り返して走った。
走る二人の顔には、この上ない程の幸せな笑顔が浮かんでいた。