第6章 身だしなみは誰かの為に
「上等もんやねぇ。こりゃ、結城紬じゃなか?流石、結城んお坊っちゃんの見立!」
御手杵様が着付けて下さった着物は、私が着ていたものとは別のもの。
綺麗なうす緑色の着物。
帯もとてもきらびやかなもの。
この着物を私に下さると言う。
「当たり前だろ」
博多様が仰った結城紬というものが何かは知らないけれど、審神者様に与えられたものとは明らかに肌触りが違う。
勿論、決して審神者様に文句を言いたい訳ではないけれど…
「御手杵様…このようなものを頂くわけには…」
私は男士様達にプレゼントを貰える様な立場には無い…。
しかも、こんなに高価な物を…。
おそれ多いと胸の内を口にすると、
「何言ってんだよ。あんたが着てくれなきゃ無駄になるだろ?気にせず受け取ってくれよ」
御手杵様が口を尖らせた。
「ですが…私なんかが…」
たまらず下を向いた。
暫く沈黙があって…
「あぁー!」
また、先程と同じ様にガシガシと頭を掻く御手杵様。
「わかったよ。俺があんたに着せたい。着てるあんたを見たい。それならいいか?」
腰を屈め、グイと私の顔を除き込む。
「それを着て、今日1日俺の隣に居てくれればいい。俺の為に着てくれ。それならいいだろ?」
「…はい」
ここまで言われては頷くしかなかった。