第1章 純白の衣
「此れをもらう」
男性はそう言った。
『此れ』と呼ばれた事に、今後、人間として扱われる事等無いと理解する。
「承知いたしました。すぐに手配致します」
役所の人が頭を下げる。
そして…
「生娘である事を確認致しますか?」
と、問うた。
『生娘』
様は男性との経験があるかどうか?
端的に言えば処女であるかどうか?を確認すると言っている。
確認とは何をするというのか?
私は高校生だ。
そりゃ、そっち方面の話が友人同士で出ないわけではない。
もう経験済みだったりする子もいる。
でも…私は、彼氏も居たことも無い。
経験なんて無い…。
【怖い】
ただ、ただ、そう思った。
今から何をされるのか分からない恐怖に、頭がまっ白で思考が止まる。
目の前の男性は首を横に振っていた。
「しかし、審神者様や男士に差し出すとなると生娘の方が…」
「確かにその方が値打ちが上がるが、年端も行かぬ娘で、見たかぎり世間知らずの嬢ちゃんだ。さして経験もなかろう…。気に止める事もない」
「承知致しました。それでは、そのままお持ちください。ここにサインを。これ以上のお手続きは不要で御座います」
目の前に交わされる会話を、
万年筆を持つ男性の手元を、
ただ、ただ、他人事の様に眺めていた。