第1章 純白の衣
「立ちなさい」
静かに発せられた言葉に従って、私は立ち上がった。
目の前に居る、オジサンとも、お兄さんとも判断つかない年頃の男性は、
上から下へ。
そして、また下から上へ。
品定めでもするかのように、私を見ている。
その隣では、
私の勝手なイメージだけれども、眼鏡を掛けてファイルを持った、いかにも市役所や区役所にでも居そうな公務員といった人が「如何でしょう?」と問いかけていた。
『如何でしょう?』の『如何』は、私を状態を指すのだ。
もう自分は、この人達にとって一つの商品である。
変に冷静な自分が嫌だ。
買われた後は…
きっと、慰み物にでもされるのだろうか…。
だったら、もう、この人でいい。
小太りな小汚いオッサンや、棺桶に片足を突っ込むような年頃の爺さんに買われるくらいなら、まだこの人の方がマシだ。
あとは、あまり痛いことをされない事を願うだけだ。
やけに冷静な自分がやっぱり嫌だ。