第6章 身だしなみは誰かの為に
本丸に来て4日目。
私はすることがない。
気軽に男士様に話し掛けられる程の勇気も信頼関係も無く、
だからといって、
ふらふらと外を出歩くわけにも、
用もないのに審神者様を訪ねるわけにも行かず、
朝食を取るために大広間へ行ったきり、部屋へ籠るしかなかった。
改めて見回すと、この部屋は
殺風景だ。
あまり明かりの入らない薄暗い部屋。
箪笥と布団と小さな机…
その他は何もない。
箪笥の中身も、審神者様が用意して下さったもの。
普段使いの着物と浴衣が入っている。
着物の正しい着方は知らないが浴衣は自分で着られるので、その要領でなんとなく着て、帯は浴衣と同じ用に結んでいた。
誰も何も言わないから、この着方が正解なのか間違いなのかもわからない…。
毎日の事だから、正しい着方を教わりたい。
どなたかに教えてもらえないだろうか…??
だけど、
「誰に声を掛けたらいいんだろう…」
私のひとり言は虚しく、
離れとなるこの部屋は本殿とは違い、しーんと静かで…
寂しさが募る。