第5章 歓迎は心して受けよ
「随分と手荒い歓迎だな」
「ハハハッ」と笑う薬研様の声が聞こえる。
歓迎?これは歓迎なの?
「君だって人の事は言えないでしょ?お説教は済んだのかい?」
「まぁな。大将は出掛ける用があったから短くて済んだぜ。それより、とっと流して出してやらねぇと逆上せてぶっ倒れるぞ。そしたら旦那達も説教行きだ」
「それは困るね」
「本当に君たちは…」
薬研様とも、髭切様とも、膝丸様とも違う声が近づく。
視界がボヤけてよくわからない。
「大丈夫かい?立てそうに無いね」
「はぁ…」というため息が聞こえて、
「どちらか身体拭きを取ってきてくれ。彩、このままじゃ出られないから流すよ」
乱れきってまとわりついているだけの襦袢を脱がされ、温かい湯が掛けられると身体中のベタつきが消えた。
「顔も拭くよ」
「じ、自分で…できます」
「せめてもの詫びにやらせておくれ」
手拭いで優しく顔を拭きとられ目を開けると、男士様の顔が視界に入る
「あ、あの…。ありがとう、ございます」
「うちの刀達がすまないね。僕は歌仙兼定。この本丸の初期刀だ。困った事があれば力になるから頼っておいで」
「しょき…とう?」
「一番最初の刀だ」
「一番最初…」
「そうだ。ちなみに薬研は初鍛刀。主が一番最初に打った刀だ。何かあれば僕たちに知らせてくれればいい」
「はい。あ、あの…歌仙様。ご迷惑をお掛けしてすみません」
「迷惑をかけたのは君じゃなく、彼らだろう?」
タイミングよく膝丸様が持ってきたバスタオルを引ったくるように受け取ると「嫌な事は嫌だと言いなさい」と身体にかけられた。
「さぁ、おしゃべりはこれくらいにして…。彩は部屋へ行きなさい。薬研。運んでおくれ」
「了解」
「や、薬研様?」
「安心しな。落としたりしないぜ」
小さな身体で私を軽々持ち上げる薬研様にも驚いたが、
「髭切、膝丸。あとで話があるよ」
先程とは違う怒りに満ちた歌仙様の声にも驚いた。