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【刀剣乱舞 R18】クロユリを食む

第4章 『約束』は頷くべからず


「綺麗だな」

隣に寝転んだ薬研様が私の髪を鋤く。
指が通る感覚が心地よくて目を閉じた。

未だ息の整わない状態の私とは違い、何事もなかったかのようにしれっとした顔をしていた彼。


それでも…

下腹部に残る疼く様な違和感や、どろりと流れ出る薬研様の熱が先程までの生々しさを表している。


「あんたは無防備過ぎるな」

呆れたような顔で薬研様が言った。


「そう…でしょうか?買われた身なので抵抗も無意味かと…。痛いのは嫌ですし…」


私が答えれば、また「フッ」と悲しそうに笑う。


「痛いのが嫌なら1つだけ覚えておいてくれ」

「…はい」

「出陣帰りの男士には近づくな。気が立ってる奴が多い。手荒く抱かれるだけで済むならいいが、殺されかねん」

「殺…され…」

「あぁ、気を付けな」

「わ、分かり、ました」

「後な…」

薬研様の言葉は続く。

「本来なら短刀と脇差しは相手にしちゃいけない決まりなんだ」

「…たんとう?わきさし?」

私が首を傾げれば、「知らないか…」と、薬研様が自分の脱ぎ捨てた服から何かを取り出す。

「こいつが俺っちの本体だ」

「本体?」

「あぁ。刀だ。意味がわからんかも知れないがこいつが俺なんだ」

「この刀が薬研様…」

「そうだ。たぶんあんたが知ってる刀ってのは腰に差すやつだろ?だが、俺達短刀は懐や着物の帯の間に挟んで持ち歩く懐刀。守り刀だ 」

「守り刀…」

「そうだ。大将が決めた決まりだから俺はあんたの相手にはなれないが、あんたを守る刀になるぜ。何かあったら頼ってくれ」

相手になれないという言葉に引っ掛かりも覚えたが、それよりも、そんな風に言ってもらえた事がすごく嬉しい。


「頼って…よいのですか?」

「当たり前だ」

ニカリとした笑顔を見せて、
わしわしの頭を撫でられた。
見た目は年下なのに…
振る舞いはうんと年上だ。


「腹へったろ?あんたは着替えて朝餉に行きな。俺は大将のお説教をくらってくる」

「お説教…」

「あぁ。ほら、来たぜ」


薬研様の言う通り、ドタドタと誰かが走ってくる音がする。

「やーげーんー!!」

足音と共に聞こえるお怒りの声はどうやら審神者様のようだ。


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