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〖イケメン戦国〗翡翠色の向日葵《豊臣秀吉短編集》

第4章 欠けた月に浮かぶ蜜影 / ◆






(……どうして、こうなったんだっけ)




ふわふわと霞む頭で考える。
さすれば、先程の美依とのやり取りが頭の中に浮かんできて……

燻った火のような想いは消えず、俺はそれを鮮明に思い出していた。















*****















「秀吉さん、似合うかな」

「ん、良く似合うぞ、可愛い」

「ありがとうっ」




鮮やかな翡翠色の着物を纏い、美依が嬉しそうに微笑む。

俺はその柔らかな笑顔に……
内心乱されながらも、余裕のあるように取り繕って、美依の頭を優しく撫でた。




今宵、城の美依の部屋をを訪れたのは、この翡翠色の着物を美依に贈るためだった。

たまたま出先で、この着物を見つけて。
『ああ、美依に似合いそうだ』と思った瞬間、買う事を決めた。

日頃、針子仕事を頑張ってるご褒美とか。
贈る理由なんて、いくらでもあるけど……
でも本音から言ってしまえば、もっと腹黒いかもしれない。




(こんな時間に部屋を訪れるのは裏がある、
 なんて、俺は呆れるくらい馬鹿だよなぁ…)




美依に片想いをして、もう長い。
でも、この陽の落ちた時間に、何かを期待して部屋を訪ねるなんて、正真正銘の馬鹿だ。

だが、ちょっとくらい……
美依の心も揺れるのではないか。
そんな風に考えてる時点で、もう自分は格好悪いと思う。

それでも、美依が好きだから。
それに、好きな女に色々贈ってやりたいのは、誰も同じだろう?

俺は情けない本音を押し込め、美依の頭から手を滑らせ、細く長い髪を梳く。

すると美依は若干頬を染め……
少し視線を泳がせながら、俺に尋ねてきた。




「本当にこの着物貰っていいのかな…?」

「ああ、お前に似合いそうだと思って買ってきたんだから」

「でもさ、秀吉さん……」

「どうした?」

「秀吉さんは…みんなにこんなに優しいの?」




(は……?)


美依の言葉に、少し驚く。
みんなに…って、そんな訳ないのに。

俺が誰にでも着物を贈っているとか、そんな風に思われたのだろうか?

俺は美依の肩を掴むと……
その問いに答えてやろうと、口を開いた。







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