第3章 世界で一番お姫様-始まり-/ ♥
「んーー……」
私が眠りから目を覚ますと、夜はまだ明けてはいなかった。
薄暗い部屋の中。
軽く瞬きをすると、ぼんやりした視界がクリアになっていき。
そんな中、目覚めて真っ先に目に入ったのは…
私の恋人、秀吉さんの穏やかな寝顔だった。
(……私のが先に目が覚めるの珍しいな)
秀吉さんに抱かれ、共に眠った時は、たいがい秀吉さんの方が先に起きていて。
いつも私が起きるまで、優しく髪を梳いていてくれる。
だから、こうして秀吉さんの寝顔を見るのは珍しい。
間近でまじまじと見てみれば……
伏せられた榛色の長いまつ毛が濃い影を落とし、すっと通った鼻筋とか、少しだけ厚い唇とか。
寝顔もやっぱりかっこいい。
でも、どことなくあどけなくて。
反則だよなぁ、可愛いとも思えるなんて。
────私、昨夜この人に愛されたんだ
(な、なんか改めて思うと恥ずかしいっ…)
昨夜とろとろに蕩かされた時を思い出し、かぁっと顔が熱くなった。
大きく無骨な手。
この手や指で、散々乱された。
そして、秀吉さんの唇で……
私は溶けるほど愛を囁かれた。
恋愛のスキルから言えば、秀吉さんには全然敵わない。
だから、いつもいつも私は秀吉さんの腕の中で、淫らに乱れて『女』にさせられてしまう。
でも、昨日はただ愛されたのではなく……
『仲直り』の意味を込めた閨だった。
「お姫様、かぁ……」
思わずぽつりと呟き、裸の秀吉さんの胸にくっついて、顔を埋める。
そう、私と秀吉さんは喧嘩をして。
そして秀吉さんは私に『一日お姫様券』をくれたの。
だから、私は散々秀吉さんにわがままを言って、一日お姫様にしてもらって。
そして、誰もいないお屋敷で……
狂おしい程、秀吉さんに抱かれたのだ。
────思えば、始まりは些細な事だった
私は軽く目を瞑り、その『始まり』を頭に描く。
最初頭に浮かんだのは、お城の廊下で光秀さんに呼び止められた場面。
そう、全てはここから始まった。
私と秀吉さん、路地裏での一悶着も。
私はまたうつらうつらと微睡みながら……
事の一連を、鮮明に思い出していた。
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