第10章 【誕生記念】滄海と花明かりの煌 / ◆&♥
「そっか、じゃあ眉間のしわ伸ばそうな。可愛い顔が台無しだぞ?」
秀吉さんが苦笑しながら、眉間を指でみょーんと伸ばしてきた。
……ちょっと気張りすぎてるかな?
でも今日ばかりは絶対頼らないと決めたから!
私は秀吉さんに心配かけまいと、笑ってみせる。
さすれば、秀吉さんも優しく笑みを返してくれた。
(いつも頼ってばかりだもんね、誕生日くらいは私が秀吉さんに頼られたいよ)
妹扱いされていた頃からそうだった。
秀吉さんは頼れる人で、世話好きで……
私なんか、本当に甘やかされてきたから。
でも今は恋仲になり、秀吉さんとは同じ立ち位置にいると思ってる。
どっちかが頼りきりではなく、お互いに頼り頼られの関係で居られたらいいなぁって、それはずっと思っているんだ。
だからこそ、今日はしっかりしたい。
きっと最高の誕生日にしてみせる。
「よし、じゃあ行くか」
「うん!三成君、見送りありがとう」
「行ってらっしゃいませ!」
こうして三成君に見送られ、私と秀吉さんは馬に乗って出発した。
今回は私が案内するから、別々の馬で移動だ。
少し振り返ってみたら、三成君が手を振ってくれて……
私も満面の笑みで、手を振り返したのだった。
明日は秀吉さんのお誕生日。
頑張って道案内しなきゃ、喜ばせなきゃ。
私はそう気合い入れていたけれど、それは少々入れすぎていたのかもしれない。
気張りすぎると、空回りする。
本来見えるものも、見えなくなってしまう。
それは当然の事だと言うのに……
私はその時『秀吉さんのためにしっかりしなきゃ』とそればかりを考えて、盲目的になっていた。
それが、うっかりドツボにハマる事になろうとは、その時の私はまだ知らなかったのだ。
*****
「いいお天気だね、よく晴れてる」
「ああ、遠出には最高だな。で、どこに向かってるんだ?」
「ふふっ、着いてからのお楽しみだよ!」
秀吉さんと二人で、広い平野を馬で移動する。
今日は晴れていて、少し吹いている風が本当に気持ちいい。
もう野の花も咲いてるし、すっかり春だ。
出かける日がこうしていい天気なのも、秀吉さんの人柄のお陰なのかなぁ。
そんな事まで秀吉さんと繋げてしまう私は、本当に好きな人の事しか考えてないなと思った。