第9章 【誕生記念】妹なんかじゃいられない! / ◆&♥
「美依、注いでやろう」
「あ…ありがとうございます、光秀さん」
「秀吉の所に行かなくていいのか?」
「皆さんとお話してるみたいなので、私は大丈夫です」
盃を差し出すと、光秀さんはそれに祝い酒を注いでくれる。
せっかくだし、少し飲もうかな。
そう思ってお酒に口を付ければ、優しいまろやかな味が口の中に広がった。
口当たりのいいお酒は大体強い、飲み過ぎないようにしないと。
私が少しずつ飲んでいると、光秀さんは私を見ながら、胡座に頬杖を付いて不敵に微笑んだ。
「どうやら、妹からは脱却出来たようだな」
「え……?」
「昨日は秀吉と閨から出てこなかったとか。おかげで、随分色っぽくなったような気がするぞ」
「ぶっ……!」
光秀さんの言葉に、私は盛大にお酒を吹く。
秀吉さんと部屋に籠っていた事は、すでに周りは周知しているらしい。
確かに散々秀吉さんには抱かれたけど……
火照ったのは収まってから外出したし、顔も蕩けてないはず!
(光秀さんは意地悪言ってるんだよね、絶対)
私が思わず頬に手を当てると、光秀さんは改めてまじまじと私の顔を見た。
そして何かに気づいたように目を瞠ると……
また口元に弧を描きながら言った。
「成程、紅を差しているから雰囲気が違うのか」
「確かに少し差してます、けどっ……」
「だが、俺がくれてやった紅ではないな。色が違う」
……光秀さん、相変わらず鋭いな。
確かに今差している紅は『誘惑』のために光秀さんからもらった紅ではない。
それじゃ、なんの紅かと言うと。
私は少し気まずそうにそっぽを向くと、光秀さんにだけ聞こえるような小さな声で答えた。
「ひ、秀吉さんが買ってくれた紅です……」
「……ほう?」
「その節はお世話になりました、ありがとうございます。でも、光秀さんからもらった紅はもう差さないと思うので……」
「ふむ、理由を聞かせてもらおう」
「っそれは」
「お前がやった紅なんて、美依には差させないからな、光秀」
(……え?)
突然聞こえた牽制するような声。
と、同時に背後からふわりと抱き締められた。
慌てて振り返れば、不機嫌そうな秀吉さんの顔が間近にあって……
私が驚いて名前を呼ぶと、秀吉さんはその姿勢のまま光秀さんに物申した。