第2章 本丸
あたりを見回してみるが、ここには日本家屋しかない。と、いうことはここが本丸か。
「うわぁ…立派なお屋敷だね……ここが本丸?」
「そうです、審神者様。本丸へようこそ」
「ん?清光、何か言った?」
「んーん、なんも言ってないけど」
思わず出た呟きに何故か返事が返ってきた気がするのだけれど、うん、多分気のせいだ。
「こちらです、審神者様」
何故だろう清光じゃない誰かの声がする。でもここには私と清光しかいないはずだから、気のせいで間違いない。
「現実逃避しないでください、審神者様。下です」
叱られた。恐る恐る下を向くと、白面に隈取のある狐と思しき動物がいた。もしかしてコレに叱られたのだろうか?
「……えーと、貴方は?」
「申し遅れましたがこんのすけと申します。審神者様のサポート役を務めます」
「これはご丁寧にどうも」
こんのすけが頭を下げているので、こちらも慌てて頭を下げる。側から見れば相当にシュールな場面だろう。ここにはそれにツッコミを入れる人はいないけれども。
「審神者様、中にお入りください。本丸内をご案内します」
こんのすけに促されるままに本丸に入れば、まあその広いこと広いこと。外から見ただけでも豪邸然とした建物だったけど、中は体感的に数倍は広い。どういう理屈でこうなっているのかは知らないけれど、何やら超技術を総動員して作られたのが本丸というモノらしい。とりあえずここは前線基地ではあるものの、余程のことが無い限り安全であるそうだ。それだけ分かればそれで良い。
「審神者様、ここから先は刀装部屋、鍛刀部屋、そしてその向かいが手入れ部屋です」
あちこち引っ張り回され、最後に連れられて来た一角には、注連縄が張ってあった。明らかに空気が違う。