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ハリー・ポッターと沈黙の天使

第11章 【孤独な子供】


 出た、スネイプお得意のハリー虐めのはじまりだ。
 スネイプはハリーの大鍋の前に両腕を組んで、ねっとりとした視線を落とした。ハリーの大鍋からは水色の細い湯気が立ち上っている。ハリーはグッとテーブルの陰で拳を握った。

「『安らぎの水薬』です」
「もう一度聞こう、ポッター。これは何だ?」
「『安らぎの水薬』です!」
「ポッター、貴様……字は読めるのか?」

 その瞬間、スリザリンのテーブルからドッと笑いが巻き起こった。毎度毎度のことながら、ハリーは執拗な虐めにも耐え、グッと食いしばった歯の隙間から微かに「読めます」と答えた。

「ポッター、黒板にある調合法の3行目を読んでくれ」
「月長石の粉を加え、右に3回撹拌した後、7分間弱火で煮る。その後、バイアン草のエキスを――」
「続けたまえ」
「バイアン草のエキスを2滴加える……」

 だんだんハリーの声が小さくなっていった。そうか、ハリーはバイアン草のエキスを加え忘れたのか。
 スネイプはそれを聞いて、鬼の首を取ったような笑みを浮かべた。

「バイアン草のエキスを加えたか?ポッター」
「……いいえ、忘れました」
「つまりこの出来損ないは全く役に立たないわけだ――エバネスコ!」

 スネイプが杖を振ると、ハリーの大鍋にあった水薬が綺麗さっぱり消えてなくなった。
 ハリー虐めが終わると、スネイプはローブを翻し教壇へと戻って行った。

「課題をなんとか読むことが出来た者は、自分の作った水薬をサンプル用の小瓶に入れ、名前を書いたラベルを張って提出すること。さらに宿題として、月長石の特性と、魔法薬の調合に関する用途を羊皮紙30cm以上にまとめ提出、以上解散!」

 皆が小瓶に水薬を注いでいる間、ハリーはずっと立ち尽くしていた。そしてチャイムが鳴ると、誰よりも先に教室を出て行った。

 クリスは慌てて後を追ったが、ハリーの足の方が速くて見失ってしまった。大広間にも、談話室にも、中庭にもいない。休み時間中あちこち探し回って、やっと湖のほとりにハリーの姿を見つけた。

 息を整えてから、クリスはハリーの隣に座った。

「……ハリー、元気出せ。スネイプの事なんて気にするな」
「別に、いつもの事だから……」
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