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ハリー・ポッターと沈黙の天使

第11章 【孤独な子供】


「ふふ~ん。まあそう言っていたまえ。5年生――つまり学期末に君たちに訪れる『O・W・L』つまり『普通魔法使いレベル試験』が差し迫ると……」
「広告なんて出さなくったって大繁盛間違いなし」
「どうして?」
「ハーマイオニー、溺れる者は藁をもつかむと言うことわざを知っているかい?」
「つまり『O・W・L』が近づくにつれ、誰もが神経をすり減らし、次々へと勉強と言う底なし沼にはまっていく」
「そこで俺たちの出番ってわけだ。差し出された救いの手に、誰もが縋り付く。俺たちは儲かる。これぞ一石二鳥、胆石盲腸」
「そう上手くいくかしら?」
「まあ結果は半年後のお楽しみってことで。我らの手が必要な時は是非ご指名を。チャオ!」

 言いたい事だけ言うと、いつも通り双子は嵐のように去っていった。
 忘れていたが、5年生になったら魔法省公認の試験があるのだ。試験の結果次第で、将来自分がどんな職に就くのかにも影響する。
 あの双子の悪だくみに乗っかりたくはないが、『ずる休みスナックボックス』に手を出す日は近いかもしれない。地獄のような時間割を見て、クリスはちょっとそんな事を考えた。

 そして迎えた最初の授業、退屈極まりない『魔法史』の授業は、ゴーストのビンズ先生の単調な唸り声によって開始10分で早速眠たくなってきた。それでなくとも昨夜から寝ていないのだ。隣を見ると、ハリーとロンもウトウトとしている。
 ハーマイオニーだけはキッと黒板をにらみつけ、一言一句漏らさず聞き入っている。そんな彼女に感心しながら、クリスはあくび1つするとそのまま眠りこんだ。

「とーっても良い授業を受けたようね?」

 授業を終わりを教える鐘と共に、ハーマイオニーの刺々しい嫌味が降って来た。
 クリスは寝ぼけ眼をこすりながら、チクチク刺さるハーマイオニーの嫌味を聞き流しつつ教室を出た。伊達に物心つく前からチャンドラーと言う説教魔に育てられてきてはいない。

 彼女の嫌味を右から左に流しつつ、適当に相槌を打ちながら、今度は『魔法薬学』の地下牢へと向かうために一旦中庭に出た。すると、前方からどこかで見たことのある顔が、走ってこちらにやって来た。

「こんにちは、ハリー!」
「やっ、やあチョウ!!」

 ハリーのやけに元気な声を聞いて思いだした、確かコンパートメントにも顔を出したチョウ・チャンとかいう女だ。
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