第11章 【孤独な子供】
それから暫くすると、ハリーとロンが降りてきた。クリスが声をかけようとすると、まるでハリーは見えていないかの様に一直線に談話室の出口に向かっていった。その顔には鬼気迫るものがあった。
クリスは慌ててハリーの肩をつかんだ。
「ハリー!ハリー!」
「何だっていうんだよ!!」
開口一番、ハリーの口から出たのは、紛れもない怒りの塊だった。
びっくりしたクリスが何も言えないでいると、女子寮から降りてきたハーマイオニーの悲鳴が談話室に響いた。どうやら張り紙を見たらしい。
ビリっと張り紙を破り捨ていると、やっとハリーとクリスの間に漂う微妙な空気に気づいた。
「どうしたの?2人とも」
「いや……その……」
「…………なんでもないよ」
「なんでもなくないわよ、その顔」
「ちょっと、昨日の夜色々あってさ。その……シェーマスが『例のあの人』が復活した事が嘘だって思ってるんだ」
ハリーの言葉を代弁するかのように、ロンが呟いた。
そうか、それでハリーの機嫌が悪いのか。確かに昨夜のパーバティとラベンダーの態度を見て、クリスも上機嫌と言うわけにはいかなかった。現にこうして眠れず、徹夜している程だ。
ただハリーは違う。入学してから、ずっとこういう状態が続いている。学校で何かある度、根も葉もない噂に左右される生活をしていて、もううんざりなんだろう。
有名税、と言えばそれまでだが、それにしたって限度と言うものがある。
目の前で人が死んだと言うのに、目立ちたがり屋の嘘つき呼ばわりされてはたまったものではない。
「ハリー、ねえ聞いて。貴方が怒るのも無理ないけど、その矛先を私たちに向けないで。私たちは何があっても貴方の味方よ?」
ハーマイオニーが冷静にそう言うと、ハリーは小さく「ごめん」と呟いた。それからクリスに向かって「怒鳴ったりして悪かった」と言った。クリスはわざと明るく「気にしてない」と言った。