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ハリー・ポッターと沈黙の天使

第10章 【アンブリッジ】


 しかしハリーが穴から入ってきた瞬間、それまで話しをしていた寮生達が一斉に話しを止め、ハリーを見つめた。

 先学期、ハリーが三校魔法学校対抗試合でセドリックの死体を抱えて、ヴォルデモートが復活したと宣言したことを、皆どう受け止めていいのか戸惑っているのだ。

 おまけに日刊預言者新聞では、毎日のようにハリーは虚言癖の少年、ダンブルドアは耄碌した爺と書かれているのだから、この反応は当然と言っては当然かもしれない。

 だがクリスは、まるで異形な者を見るような目つきでハリーを見ている事に腹が立った。

「おい、言いたいことがあるなら堂々と――」
「――良いんだ、クリス。もう部屋に戻ろう。おやすみ」

 当のハリーにそう言われてはどうしようもない。クリスはチッと舌打ちをすると、1人女子寮へと続く螺旋階段を上って行った。
 まだ誰も帰って来ていない部屋に入ると、クリスは自分のトランクを確認してからベッドに身を投げた。

 明日からもう授業が始まる。そうすれば皆の誤解を解く事も出来るかもしれない。それに今は好き勝手に噂しているが、人の噂も七十五日と言う。時間が経てばやがて皆のハリーを見る目も変わるだろう。

 だが――自分はどうだ?ヴォルデモートが復活した今、勢力をどんどんと増していく中でどうやって自分の身の潔白をどう証明できるだろう。
 ヴォルデモートの娘という時点で、村八分にされて当然の立場だ。ホグワーツの生徒の中で、親族をヴォルデモート達に殺された人も少なくないのだ。

「戻って来ないほうが、良かったのかな――」

 あの古びた洋館の中で、シリウスと2人きり静かに暮らすのも悪くない。
 それどころか、いっそのこと魔法など使えなくなって、ヴォルデモート達に自分が利用する価値が無い事を知らしめてやりたい。
 そうすればサンクチュアリの森に戻って、チャンドラーと共に、父と母の墓を守りながら死んでいける。
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