第10章 【アンブリッジ】
「続いて、クィディッチの代表選手選抜の日だが、これは各寮キャプテンの――」
「エヘン、エヘン」
ダンブルドアの演説中に、突然甲高い、だが自己主張の激しい咳払いが聞こえてきた。
ホグワーツに入学して5年目になるが、こんな事は初めてだ。誰であろうとも、ダンブルドアの演説を中断しようとした者はいない。
初めは無視して話を続けようとしたダンブルドアだったが、またしても「エヘン、エヘン」と甲高い咳払いがして、ついにダンブルドアは話しを止めた。
「――何用かな?アンブリッジ先生」
「失礼、あたくし、まだ皆さんに自己紹介をしておりませんでしたので」
「おおぉ!それは失礼、ではどうぞ先生」
その場にいた職員全員が嫌な顔をしたが、ダンブルドアは決して柔和な顔を崩さず黙って席に着いた。
アンブリッジと言う女は、もう一度「エヘン」と咳ばらいをすると、ガマガエルのような大きな口を横いっぱいに引っ張ってニターっと笑った。
「皆さん、初めてお目にかかります。あたくしはドローレス・アンブリッジと申します。大丈夫かしら?後ろにいる子まで、あたくしの声が聞こえているかしら?」
皆シーンと静まり返り、誰も返事をしなかった。アンブリッジは耳に手を添えて、ジェスチャーで返事を促すと、どこからともなくボソボソと返事らしきものが聞こえてきた。
アンブリッジは横いっぱいに引っ張った唇のまま、眉をまげて苦笑いをした。
「皆さん緊張しているんですかね?でもダメですよ、お返事は大切なコミュニケーションの基本ですからね。次からは気をつけましょうね。では、もっと打ち解けて貰うために、少々あたくしの自己紹介をさせて頂きますね。良いですか?」
誰も返事をしないと、アンブリッジはもう一度「良いですか?」と聞き直した。テーブルのあちこちから、小さい声で「良いですよ」と声が聞こえると、アンブリッジはまたガマガエルの様な顔でニターっと笑った。
それからスッと表情を変え、まるで暗記した文章を機械のように喋りだした。