第10章 【アンブリッジ】
「さて、皆腹も膨れて満足したころじゃろう。ベッドに入る前に、幾つか注意事項を言わせてもらおう。在校生は分かっていると思うが、禁じられた森には絶対に立ち入り禁止じゃ。死ぬより辛い目に遭いたければ別じゃがな」
ふと、クリスは1年生の頃に罰則で禁じられた森に入ったことを思い出した。あれから4年しか経っていないが、なんだかもう10年以上も前の出来事のように感じる。
「それから管理人のフィルチさんからの要望で、全校生に『授業と授業の間の休み時間に廊下で呪文を使うことを禁じる』そうじゃ。他にも禁止事項が462項目あるが、事務所のドアに張り紙の一覧があるから目を通しておいて欲しい」
恐らく全校生徒の1%にも満たない人間しか気にしないであろう注意事項を口にすると、今度はダンブルドアは教職員達に視線を移した。
その中に微かに記憶にある顔が1人、そして見知らぬ新顔が1人確認できる。
1人は前年ハグリッドの代わりとして『魔法生物飼育学』を務めたプランクという先生。そしてもう1人はハリーが言っていたアンブリッジと言う女だ。
改めてアンブリッジの顔を見て、クリスは思わずウッと顔をしかめた。
くりくりのカールした髪に小さなリボンを幾つも着け、少女趣味のピンクのカーディガンに、ガマガエルそっくりな気色の悪い笑顔。
天地がひっくり返っても、クリスはこの先生とは仲良くなれないだろうと直感した。
「まずは新任のドローレス・アンブリッジ先生じゃ。新たに『闇の魔術に対する防衛術』を教えて下さる。続いて、知っている生徒もいると思うが、グランブリー・プランク先生じゃ。前年に引き続き『魔法生物飼育学』を担当なさる」
あくまで礼儀としてのおざなりの拍手が、パラパラと響いた。
そんな事より、ダンブルドアがプランク先生がいつまでいるのか言わなかった。となると、ハグリッドは一体どうなってしまったのかが気になる。
先学期の終わりに、ダンブルドアの命を受けマダム・マクシームと一緒に任務に出たはずだが……。