第9章 【結束の歌】
クリス達がグリフィンドール席に着くと、あちらこちらから痛いほど視線を感じた。その殆どが、ハリーに注がれている。
ひそひそと噂話が聞こえてきたが、ハリーはあえて無視をして教職員用テーブルに視線を向けた。
「やっぱり、ハグリッドがいない……どうしたんだろう」
「きっと、休み前に言っていたダンブルドアの任務が終わってないのよ」
「まさか……怪我なんてしてないよね?」
「大丈夫だろう、きっと」
そうは言ったものの、不安を拭い去る事は出来なかった。その時、教職員用テーブルを見つめていたハーマイオニーが、ダンブルドアの隣に座る、ピンクのローブを着て薄茶色の巻き毛をしたずんぐりむっくりな魔女を指さした。
「ねえ、あれ誰かしら?」
「あれ……確か魔法省に勤めているアンブリッジとか言う人だ!」
「知っているのかハリー?」
ハリーの眼が、アンブリッジと呼んだ魔女に釘付けになった。
アンブリッジは、年甲斐もなく少女の様なピンク色の口紅を、ガマガエルの様な横に広がった唇にべったりと塗り、大きく飛び出た目でキョロキョロ辺りを窺っている。
その姿はまるでハエを探すカエルそのものだった。いつ長い舌が飛び出てきてもおかしくないとクリスは思った。
「僕の尋問に来ていた。確か、ファッジの下で働いている」
「ファッジですって!?」
ハーマオニーが信じられないと言う声を出した。無理もない、ファッジと言えば魔法大臣と言う権力を盾にやりたい放題、日刊預言者新聞にも、ヴォルデモート復活を一般市民に知られないよう圧力をかけている。
そんな男の下で働いている女が、何故このホグワーツに居るのだろう。クリスの脳裏に嫌な予感がよぎった。
それから、とうとうハグリッドが姿を現さないまま、マクゴナガル先生が新入生を連れて大広間に入って来た。
新入生はみんなガチガチに緊張していて、それを見てクリスも自分が1年生の時を思い出した。
あの頃はスリザリン寮に入りたくない一心で、組み分け帽子に喧嘩を売ったものだ。今となってはそれが懐かしく思える。
新入生が全員大広間に入ると、全校生徒の見守る中、組み分け帽子がイスの上でプルプルッと震えて継ぎはぎだらけの裂け目から歌を歌い始めた。