第9章 【結束の歌】
今こそ歌おう 彼の歌を 私が生まれて 間もない頃を
4人の偉大な創始者が 集まり 育て 夢を見た
どうかこの絆がいつまでも 続くことをと 祈りを捧ぐ
しかし運命とは時として 非情な道を 指し示す
それぞれが持つ特性が いつの間にやら 別れ道
グリフィンドールが尊ぶは 勇気ある者こそ良しとせん
レイブンクローが尊ぶは 叡智ある者こそ良しとせん
ハッフルパフが尊ぶは 慈愛ある者こそ良しとせん
スリザリンが尊ぶは 純血の者こそ良しとせん
かくして生まれた亀裂をば 修復の時は 訪れぬ
悲劇の末路はご覧の通り 争う4つの寮となり 互いに競い 和を乱す
夢見た調和は崩れ去り かくして私が 創られた
されど今こそ結束の 時を再び 呼び戻せ
4つの寮が力を合わせ 訪れん危機を 乗り切るべし
内なる力を強固にし 外からの力に 対抗すべし
私が語るはただの歌 しかし歌と侮るなかれ
私は歴史の奏者なり 熾烈を極める 幕が上がる
私は再び警告す これから始まる物語は 決して喜劇などでは無い
組み分け帽子が大人しくなると、一瞬静寂の後、例年通りの拍手が起こった。それと同時に各寮のテーブルで、今組み分け帽子が話していた内容が何だったのか意見を交わしている。
クリス達も例にもれず各々の考えを囁き合った。
「これって、間違いなく『例のあの人』が復活したって事を指しているわよね?」
「多分そうだと思う。組み分け帽子は普段校長室に保管されているから、何か感じ取ったのかもしれない」
「ねえニック、これまでに組み分け帽子が警告を発した事なんてあった?」
「ええ、有りましたとも。腐っても創設者時代から語り継いできた魔法の帽子。どうやら彼は学校を守る事を自分の使命だと感じている様ですな」
ロンがゴーストの「ほとんど首なしニック」に訊ねると、ニックは大真面目な顔で頷いた。――学校を守る。と言う事は、今まさにホグワーツに危険が迫っていると言う事だ。
消えたハグリッド、組み分け帽子の歌、ニックの証言。いかに不死鳥の騎士団が動いていようと、事態は良くなっているわけではないと言うのが明白だ。
クリスは腕に着けられた銀の腕輪ごと、左手首をギュッと握りしめた。