第9章 【結束の歌】
皆が馬車に乗り込むと、ホグワーツ城に向けてゆっくり走り出した。舗装のされていない道はデコボコしており時折ガタンと大きく揺れた。
ハリーは誰とも視線を合わさず、ぼんやり窓の外を眺めていた。それを見ながらクリスはどこか不安に駆られた。
ハリーに見えて他の人には見えないもの――ひょっとしてヴォルデモート関連かとも思ったが、それならルーナにも見えるのはおかしい。だが、完全に否定は出来ない。
「ハ――」
「ところで、何でハグリッドじゃなくてグランブリー婆さんなんだろう。ハグリッドはどうしたのかな?」
ハリーに声をかけようとした時、ロンが出し抜けに言ったのでクリスの言葉がかき消された。皆クリスが話し始めようとした事など気づきもせず、そろってその話題に乗っかった。
「まさか辞めたなんて事ないよね?」
「あたしは辞めてくれたら嬉しいけど。あんまり良い先生じゃなかったし」
「「「良い先生だ!!」」」
ハリー、ロン、ハーマイオニーの3人が声をそろえた。クリスにも同調するように視線を投げかけたが、クリスは肩をすくめてどっちともつかない息を漏らした。
「まあ、私はハグリッドの授業を取ってないからなんとも。でもハグリッド自身は良い人ではあるな、うん」
「あっそう。でもレイブンクローじゃあんまり評判良くないよ」
「じゃあレイブンクローの奴らはユーモアのセンスがないって事だ」
ロンが怒ったように言ったが、ルーナは特に気にも留めていなかった。寧ろロンを珍しい動物を見る様な目で凝視していた。
馬車の中はそれっきり誰も喋らないまま、ガタゴトと揺れながらホグワーツ城の門を通過して行った。
馬車は大きな樫の扉のある石段の前で止まった。久しぶりに見るホグワーツは、外観は何も変わっていないのに、もう何年も経ったような気分がした。
馬車を降り、玄関ホールへと入る。まず大きなシャンデリアの光が生徒達を歓迎した。それから大広間に入ると、何千という蝋燭の明かりと、それに照らされたピカピカの金のお皿が目に入った。
大広間の中央は組み分けする生徒達様に空けられ、三本足の椅子にはもう組み分け帽子が置かれていた。