第9章 【結束の歌】
「あの――その、まあちょっと面白い記事もあるって……つまりは――」
「気に入らないなら返して」
ルーナはサッとザ・クィブラーを取り返すと、一瞬ハーマイオニーの顔をチラリと見て、フンと顔を背け、また逆さまのザ・クィブラーを読み始めた。
気まずい空気がコンパートメントに流れる。するとその時、コンパートメントの扉が無遠慮に開かれた。
そこには品の悪いプラチナブロンドに白い肌、薄いブルーグレイの瞳に、意地悪い笑みを浮かべたドラコが、いつも通り腰ぎんちゃくのクラップとゴイルを従えて立っていた。
間違いなく、この午後のひと時をぶち壊しに来た事は明らかだった。
ドラコはちょっと首をかしげて笑った。
「やあクリス。楽しい夏休みだったかい?何でもウィーズリーのあばら家に泊まっていたそうじゃないか」
「失せろドラコ、今の私にお前と口を利く気はない」
ドラコが悪いわけではないのは分かっている。だが彼の父が『死喰い人』としてヴォルデモートに加担し、その結果大切な人を2人も殺したのは、許せることではなかった。
ドラコはずかずかとコンパートメントに入って来ると、クリスの二の腕を掴んだ。
「分かっているだろう?君は本来こんな場所に居るべき人間じゃない。少しは自分の身を案じたらどうだ?」
「分かっていないのはそっちの方だ。私は父親殺しと一緒になる気はない、失せろ」
父親殺しと聞いて、ドラコの眉がピクリと動いた。ドラコにとっても、クラウスは幼い頃から知っている近しい間柄だった。その人の死に、自分の父親がかかわっている事はもう知っているはずだ。
多少のショックはあるだろうに、ドラコは平静を装い、薄い唇を曲げたまま、さらに言葉を続けた。
「そんな口をきいて良いと思っているのかい?君の状況は危険だ、だからその前に“僕達”が助けてやる」
「ハッ!お前はまだ私の許婚気取りなのか。笑わせる、お前にそんな度胸があるのか?『闇の皇帝』の義息子になる度胸が」