第9章 【結束の歌】
それだけ言うと、ルーナはまた視線を雑誌に戻した。ロンはポカンと口を開けてルーナを見たが、ルーナの視線はザ・クィブラーに釘付けだった。
何の脈絡も無い宣言に、クリスはプッと吹き出した。どうも自分はこう言う“普通からちょっと飛びぬけた”存在に弱いらしい。
同じようにハリーもジニーも、クスクスとこみ上げてくる笑いを必死になって隠していた。
それから、皆で遅めの昼食を取る事にした。クリス達はウィーズリーおばさんの手作りサンドウィッチだ。チャンドラーが作るサンドウィッチに比べて少々ボリュームに欠けていたが、それなりに美味しかった。
ロンとハーマイオニーが巡回に戻るまでの間、皆で雑談したり、カエルチョコレートのカードを交換したりして過ごした。その間も、ルーナは雑誌を読み続けていた。
そこまでのめり込むほど面白いのかと、クリスはちょっと興味が湧いてきた。
「ルーナ、読んでいる最中で悪いが、その雑誌貸してくれないか?」
「良いよ、はい」
ルーナから読んでいた雑誌を受け取り、クリスは表紙に目をやった。大きく『ザ・クィブラー』と書かれた雑誌名と、下手くそなコーネリウス・ファッジのイラストがやたら目を引く。
さらに見出しには『ファッジのグリンゴッツ乗っ取り事件簿』と書かれている。気になってパラパラとページをめくると、目次には次のように書かれていた。
『腐敗したクディッチ選手権――トルネーズの汚いやり口』
『古代ルーン文字――読み解け!隠された秘密』
『シリウス・ブラック――大量殺人鬼の恋人』
その馬鹿馬鹿しいタイトルを見ただけで、クリスは再びぷっと吹き出した。なんて素晴らしいほど“人生の役に立たなさそう”な雑誌なんだ。クリスは目次を見ただけでこの雑誌が気に入った。
しかしハーマイオニーは、横からチラリと覗き見てまるで馬鹿にするように嘲った。
「止めておきなさい、クリス。その雑誌、下らない記事だらけよ。ザ・クィブラーって言ったらインチキな記事ばかりで有名だもの」
「あたしのパパが編集長をやってるんだけど」
突然、それまでどこか浮世離れしていたルーナが、ハッキリとした声で言った。コンパートメントに気まずい空気が流れる。ハーマイオニーは何とか取り繕うとした。