第9章 【結束の歌】
ロンとハーマイオニーがコンパートメントにやって来たのは、時計が午後を回り、車内販売の魔女が行った後だった。
2人ともとても疲れていて、特にロンなんかはコンパートメントに来るなりドカッと座って、ハリーが買った大鍋ケーキを両手で口に放り込んだ。
「やってらんないよ、なんで僕らが10分おきにコンパートメントの見回りしなきゃならないんだか」
「文句言わないの。それが監督生の義務なのよ」
そう言いながらも、流石のハーマイオニーも疲れの色を隠し切れなかった。だがハーマイオニーは体力的に疲れたと言うより、気疲れの方が大きかったみたいだ。
少し血色の悪い青白い顔をしながら、うんざり顔のハーマイオニーがハリーとクリスに向かってこう質問した。
「スリザリン寮の新しい監督生、誰だか分かる?」
「マルフォイ」
「パンジー・パーキンソン」
ハリーとクリスはそれぞれ最悪だと思う結果を即答した。心のどこかで、この予想は当たるだろうと確信していたら、案の定ハーマイオニーが絶望的な声で「当たり」とため息交じりに言った。
「信じられる?よりによってあの2人だなんて。ダンブルドアも何を考えているのか分からないわ」
「ハッフルパフとレイブンクローは誰なの?」
「ハッフルパフはアーニー・マクミランとハンナ・アボットよ。それからレイブンクローはアンソニー・ゴールドスタインとパドマ・パルチ」
「どれもイマイチだな」
クリスが率直に述べた。アーニー・マクミランは2年生の時、ハリーの事を『真の継承者』だと勘違いしてある事ない事吹聴していたし、ハンナ・アボットも一緒になって騒いでいた。
レイブンクローのパドマ・パルチは姉妹のパーバティと同じく勉強より見た目を重視していたし、アンソニー・ゴールドスタインに至っては名前すら聞いた事がない。
本当に、ダンブルドアは何を基準に監督生を選んでいるのだろう。
ふと、ルーナが雑誌から視線を外し、ロンを凝視しているのに気づいた。ジッと見つめられてロンは少したじろいだ。
「な……なに?」
「あんたパドマ・パルチとダンスパーティに行ったでしょ」
「それがどうかした?」
「あの子、あんまり楽しくなかったって言ってた。あんたがダンスを踊らなかったから。でもあたしなら気にしなかったよ、だってあんまりダンス好きなじゃないもん」