第8章 【悪夢】
しかし空いているコンパートメントは中々見つからず、結局最後尾まで来てしまった。するとそこで、窓からコンパートメントの中を伺っているネビルを見付けた。
「やあネビル、久しぶり」
「ハリー!ひ、久しぶりだね。そうだ、席見つかった?僕、どこも見付けられなくて……」
「何言ってるの?ここが空いているじゃない」
ジニーは堂々とコンパートメントの扉を開けると、気さくに「ハーイ!」と挨拶をした。中に居たのは、ルーナ・ラブグッド1人だった。
ルーナは相変わらず不思議な出で立ちで、杖を耳に掛け、首にはバタービールのコルクを繋ぎ合わせたネックレスをしており、『ザ・クィブラー』と言う雑誌を逆さまに読んでいる。その様子を見て、ハリーとネビルが1歩後ずさった。反対に、クリスはルーナに1歩近づいてみせた。
「久しぶりだな、ルーナ。ここ空いているか?」
「うん、見ての通りあたし以外誰もいないから」
ルーナの了解を得て、4人は苦労してトランクを荷台に乗せ、やっと腰を下ろした。
ふと気がつくと、いつもぼんやりとしているルーナの目が、珍しく雑誌を少し下にずらして、上目遣いでハリーに注がれている。クリスは咳払いをすると、3人を紹介した。
「もう知っていると思うけど、こちらはハリー・ポッター。それとネビル・ロングボトム。それからジニー・ウィーズリーだ。ジニーとは、同じ学年だったな?」
「そうだよ、寮は違うけどね。あたしはレイブンクロー。――あんた、ハリー・ポッターでしょ」
「ああ、うん……」
出し抜けにルーナがそう言うと、あまり自分が有名だと特別視されたくないハリーは、バツが悪そうに返事をした。
一方、ネビルは座り心地が悪そうにモゾモゾと動いている。そんなネビルを無視して、ルーナはジッとハリーを見つめていた。
数える程度しか会った事の無いクリスだったが、正直ルーナがここまでハリーに興味を示すのには少し驚かされた。
有名だと言っていたクリスにもあまり興味を示さなかったので、てっきりハリーにも同じ反応を示すと思っていたが、どうやら違うらしい。
一応紹介も終わり――ルーナは再び雑誌に視線を戻し――思い思いコンパートメントでくつろぎ始めた。列車は時折汽笛を鳴らしながら、ホグワーツに向かってぐんぐん進んでいく。