第7章 【監督生】
その後、シリウスから解放されたクリスは、良い機会だからと普段話す事の出来ないムーディ先生やキングズリーと話し込んだ。
2人とも腕利きの闇祓いとして騎士団に仕えており、『死喰い人』についてどういう考えを持っているか聞くことが出来た。
有難いことに、2人はクリスが純血主義の家系に生まれたからといって、クリスに対し、偏見を持っていなかった。寧ろ、純血主義の家系に生まれたからこそ『死喰い人』について、知るべきことはしっかり知っていた方が良いと言った。
2人の意見では、『死喰い人』にもピンからキリまでいるということだった。
純血主義の思想に染まり、自ら進んでヴォルデモートに手を貸していた者。反対に『服従の呪文』をかけられて自らの意思とは無関係に働かされていた者。そして魔法使いから虐げられ、魔法界に深い恨みを持っていた者。
そんな中で、一体どこからどこまでが“悪”なのか、その線引きは難しいと言った。
「あの、えっと、お2人は、その『死喰い人』だった父に会った事はありますか?」
「フム……クラウス、か――」
クリスが恐る恐る訊ねると、ムーディが顎に手を当て、神妙な顔をした。キングズリーは腕を組み、15年前を思い出す様に目をつぶっている。
「そうだな、強いて言えば――悪に成り切れない悪人だったな」
「悪に……成りきれない?」
「ああ、奴はヴォルデモートの下についていたとは言え、決して他の『死喰い人』の様に快楽で人を殺した事は無かった様に思える」
ムーディ先生の言葉を聞いて、クリスはクラウスの最期の姿を思い出した。
自分を庇って死んだ育ての父――あの時、ヴォルデモートに離反する意思があったのなら、なぜもっと早くそうしなかったのだろう。その気になれば、母を連れ出して逃げることも出来たはずだ。
しかし今となってはもう確認のしようがない。クラウスは、自分を庇って死んだのだから……。
虚しさが心を占める。クリスは閉じかけていた胸に空いた穴が、再び広がった様な気がした。