第7章 【監督生】
「リーマス、私の可愛いレディにあまり近づくな」
「レ……レディ?シリウス、どう言う事?」
「この際だからハリーにも言っておこう。クリスは私の可愛いステディだ。だからちょっかい出すなよ?」
「はぁ?」
クリスの口から間抜けな声が出た。ルーピン先生はやれやれと肩をすくめ、トンクスは爆弾発言に興味津々と言った風に目を輝かせている。
ハリーはと言うと――微笑んでいたが、背後にどす黒いオーラを纏っていた。そしてシリウスは何故だか凄く楽しそうだ。クリスはジト目でシリウスを睨んだ。
「シリウス、酔っているのか?」
「酔ってなんていないさ、私は事実を言っているまでだ。毎晩同じベッドで寝ているんだ、これを恋人と呼ばずに何て呼ぶ?」
そう言って、シリウスはクリスの頭に軽いキスをした。――ああ、シリウスは絶対にこの状況を楽しんでいる。なんて性質の悪い酔っ払いだろう。
クリスがシリウスから離れようとすると、今度はシリウスの手がクリスの腰を掴んで放さなかった。
「逃げる事ないだろう?マイ・ステディ」
「えっ!?ヤダ、何々?2人は禁断の関係なの!?詳しく聞かせて!」
「……ふーん、そう言う事。良かったね、クリス」
「ハリー……目が笑ってないんだが……」
誤解も解く事すら出来ず、冷笑を浮かべたまま、ハリーは人ごみをかき分けテーブルの向こう側に居るロンの元へ行ってしまった。
シリウスの顔を見上げると、満面の笑みを浮かべている。呆れて言葉が出ないクリスの代わりに、ルーピン先生が口を挿んだ。
「シリウス、あまり若い子をからかうんじゃない」
「うーん、ハリーはこの手の冗談には乗らないタイプだったか」
「えー、冗談だったの?つまんなーい!」
トンクスが「折角のラブロマンスの予感だったのにー」と口を尖らせブーブー文句を言った。クリスはもうどうにでもなれ、と言う気持ちだった。
それよりも、こんな事で人をからかって面白がるなんて、シリウスは案外精神年齢が低いんじゃないかと言う疑惑が、クリスの中で浮上していた。