第7章 【監督生】
夜の10時を過ぎても、パーティは終わらなかった。クリスは精神的にも肉体的にも疲れていたので、部屋に戻ろうかと考えた。その時、突然上の階から女性の叫び声が聞こえてきた。
すぐさまムーディ先生、シリウス、ルーピン先生が部屋を飛び出した。
「今の、ママの声だわ!!」
「ママに何かあったんだ!!」
悲鳴を聞いて、慌てて部屋を出ようとしたウィーズリー家の兄妹を、トンクスとキングズリーが素早く扉の前に立ち塞がって止めた。2人とも手には杖を握っている。
「悪いが何が起こったか分からない以上、部屋から出すわけにはいかない」
「こんな時に何言ってるんだ!!僕らのママだ!」
「こんな時だからこそ、冷静になるんだ。既にムーディ達が向かった、後は大人達に任せるんだ」
キングズリーの低く深い声に、兄妹達は何も言い返すことが出来ず、ぐっと唇を噛み締め睨みつけていた。
ウィーズリーおじさん、長男のビルが、兄妹達の肩に手を置いて安心させようとしていた。
いったい上で何があったのか、何も知らされないまま待っていると言う事がこんなに辛いと思った事は無かった。
ウィーズリーおばさんの悲鳴が聞こえてから、いったいどれくらいの時間が経っただろう。緊張して張りつめた空気の中、沈黙して待っているとルーピン先生が戻ってきた。
「モリーなら大丈夫だ、ボガートを退治しようとしてちょっと失敗しただけみたいだ。誰にでもあるミスだよ」
ルーピン先生がにっこり笑ってそう言うと、その場に居た全員がホッと息を吐いた。
それからシリウスとムーディ先生も戻って来て、もうパーティはお開きにしてテーブルの上を片付けようと言った。皆で手分けして作業をしている最中、クリスはふとハリーの姿がない事に気づいた。
「ハリーはどうしたんだ?」
「ああ、ハリーなら先に部屋に戻った。なんでもパーティで少し疲れたらしい」
「……そうか」
ハリーがクリスとシリウスの仲について、妙な誤解をしたまま明日を迎えるのはちょっと抵抗があったが、疲れて部屋で休んでいるのを邪魔するのも気が引ける。
結局その日は片づけを終えると、クリスもそのままベッドに直行して眠ってしまった。