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ハリー・ポッターと沈黙の天使

第1章 The summer vacation ~Sirius~


「おいで、夏とは言え夜は寒い」
「ありがとう……」

 招き入れられたは良いが、クリスはどうして良いか分からず入り口でまごついていた。するとシリウスはベッドに身を投げ出し、肘を立てて寝ころぶと、戸惑っているクリスに向かって空いたスペースをぽんぽんと叩いた。
 クリスがおずおずとベッドの端に行くと、シリウスはその腕をぐっと引っ張って、半ば無理矢理ベッドの中へ引きずり込んだ。

「うわ!」
「これでよし。いつもあんな風に行ったり来たりしていたのか?」
「……ごめん」
「怒ってはいないよ、寧ろ嬉しいくらいだ」
「嬉しい?」
「ああ、私の愛がクリスに届き始めた証拠だ」

 シリウスは、どうしてこう恥ずかしい事をサラッと言えるんだろうか。クリスはシリウスの腕の中で身をよじりながら、視線をシリウスに向けた。
 薄暗い中でも良く分かる、シリウスの整った顔。黒い髪、スッとした鼻、大きな目、形の良い唇。思わず見とれてしまいそうになる。
 それと同時に少し悲しくなった。セドリックと、どこか似ていて――。

「シリウスって、昔は絶対にモテただろう?」
「そうだな。学生の頃はよく女の方から声はかけられたが、でもジェームズ達と遊んでいる方が楽しかったな」
「……恋人とか、いたのか?」
「どうだろうな。恋人、とまで呼べる女の子はいなかったかな」
「そっか……」

 自分から聞いておいて、クリスは聞かなければ良かったとちょっと後悔した。何故か胸がざわつく。この腕に、この胸に、一体何人の女が触れたんだろう……。

 止せばいいのに、クリスは自分から軽くシリウスの胸に頭をすり寄せた。するとシリウスがクリスの頭に、チュッと唇を落とした。途端にクリスの平常心が崩れた。

「えっ?いいいい今、何を?」
「駄目だったか?可愛いと思ったからしたんだが……」
「いいいいや、駄目とか、そう言う問題じゃ――」
「じゃあ良いんだな。ありがとう」

 そう言って、今度は額にキスをした。これで確信した、シリウスはプレイボーイだ。それもかなりの。
 これ以上ここに居たら、きっと心臓がもたないだろう。クリスは自分の部屋に戻ろうと身を起こそうとしたが、その腰をシリウスが抱きかかえて放さなかった。
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