第7章 【監督生】
ロンの怒りが爆発しそうになった丁度その時、ウィーズリーおばさんが山のような洗濯物を持って部屋に入って来た。
「さっきジニーにホグワーツから手紙が来たわ。あなた達にも来たんでしょう?午後にダイアゴン横丁に行って皆の分の買い物をして来るわ。さあ、リストを見せて頂戴」
「リストの前に、ロン、バッジをママに見せてやれよ」
フレッドが挑発する様に言った。ウィーズリーおばさんは何も聞こえなかったかの様に、洗濯物を分けながら鼻歌交じりに聞き返した。
「え?何を見せるんですって?」
「バッジだよ、ママ。ロニー坊やの監督生バッジ」
「えっ?……ええぇ!?」
ウィーズリー夫人はロンの方を見ると、信じられないものを見る様にロンの顔とバッジを何度も何度も確認した。そして目にしたものが本当にロンの監督生バッジだと分かると、ウィーズリーおばさんはロンに抱きついて顔の至る所に熱烈なキスをした。
「なんて事!なんて事なの!!監督生、ロンが監督生だなんて!素晴らしいわ、これで子供達全員監督生よ!!」
「子供たち全員?俺とジョージは何なんだよ」
「とどのつまり兄弟よ、僕達は屋根裏お化け以下みたいだ」
諦めの極致であるかの様に「もうついて行けないぜ」とフレッドが肩をすくめた。
ロンは顔を真っ赤にして、母親の腕の中から逃れようともがいていた。ややあって、ウィーズリーおばさんはロンを放した。その顔には満面の笑みが浮かんでいる。
「ご褒美を上げなくちゃ!監督生に選ばれたんですもの、主席になるチャンスもあるわ!何が良いかしら、ふくろうはもう持っているし……新しいドレスローブなんてどう?」
「残念ながら僕達がもう買ってやったよ!」
「あのっ!ママ……僕、新しい箒が欲しい、なんて……駄目?」
ロンが母親の顔色を窺いながら言った。ウィーズリー夫人はちょっと眉をピクリと動かし、口を閉ざした。
箒は高級品で、ウィーズリー家の家計事情を考えるとかなり厳しい。ロンは慌てて「高級じゃなくて良いから!」と付け加えた。
懇願するロンの目を見て、少し間を置いてからウィーズリー夫人がにっこり笑った。
「ええ、ええ良いわよ。さて、それじゃあ早めに買い物に行かなくちゃ!――監督生、ロニーが監督生だなんて……」
浮かれた様子でウィーズリーおばさんは部屋を後にした。