第6章 【寂しがりや】
ハリーはこの屋敷に来てから今まで見せた事ない程の明るい笑顔を見せた。
ウィーズリーおばさんがハリーの為に食事を用意すると、安心してお腹が減ったのか、ハリーはそれを勢いよくかっ込んだ。
向かいの席に座っていたクリス がその様子を微笑ましく見つめていると、突然ハリーが「痛ッ!」と言って額の傷を押さえた。
「どうした、ハリー?」
「傷が――ううん、なんでもない」
口では「なんでもない」と言っていたハリーだったが、額の傷が痛んで良かった事など1度もない。
クリス はダンブルドア先生に相談した方が良いと言おうとしたが、ハリーは何事も無かったかのように、また勢いよく料理を口に詰め込んだ。
ハリーの無罪放免の知らせは、その日の内に屋敷に来た全員に知られることになった。
ルーピン先生はいつもより2割増しで笑って喜んでいたし、トンクスは喜びのあまりハリーに勢いよく抱きついて頬にキスをした。
シリウスは嬉しそうにハリーの手を掴んで力いっぱい振ったし、キングズリーという背の高い黒人の闇祓いは「信じていたよ」と言って白い歯をニッと光らせた。
しかし、喜んでいられるのも数日だけだった。大人達は任務の為、相変わらず忙しく屋敷を出たり入ったりしていたし、シリウスは日を追うごとに気難しくなり、ピリピリとした空気をまとってバックビークがいる部屋に籠る様になった。
* * *
「……僕、シリウスに変な期待持たせちゃって……無罪にならない方が良かったのかな?」
尋問から数日後、ハリーが4階の寝室のすす払いをしながら、ぽつりと呟いた。それを聞いたハーマイオニーはとんでもないという顔をした。
「何言ってるの!?彼方は無罪になって当たり前なの!変な期待するシリウスの方がどうかしてるのよ」