第6章 【寂しがりや】
時々、騎士団のメンバーも手伝ってくれて、そのたび子供たちは騎士団のメンバーから、何が起こっているのか聞き出そうとしたが、ウィーズリーおばさんが目を光らせているので、あまり収穫は無かった。
ある日の晩、ウィーズリーおばさんが夕食の席でハリーにこう言った。
「ハリー、明日着る服にアイロンをかけておきましたよ。第一印象が良いと後の印象も変わるわ」
一瞬、みんな食事の手を止めてハリーの方を見た。ハリーは固まり、みるみる内に顔色が悪くなって、不安げな顔でシリウスを見た。
しかし答えたのはシリウスではなくウィーズリーおばさんだった。
「ダンブルドア先生のお考えでは、シリウスが一緒に行くのは良くないとお考えよ。もし万が一の事があったら――」
「ええ、ええ。私も“ダンブルドアが正しい”と思いますよ」
おばさんが最後まで言い切る前に、シリウスが歯を食いしばりながら言った。ハリーは余計に不安そうな顔つきをした。それを見てウィーズリーおじさんは、凍った空気を払拭しようと、わざと明るい声を出した。
「心配しなくても大丈夫だよ、ハリー。明日は私と一緒に行こう。尋問の時間まで私の職場で待つと良い。怖い所じゃないから安心して良いよ」
「……はい」
ハリーは力なく頷いた。それっきり気分が沈んでしまい、その日の夕食はあまり美味しく感じられなかった。
その日の夜、クリスが眠れずベッドの上で何度も寝返りを打っていると、誰かがドアをノックした。鍵を開けるとそこにはシリウスが立っていた。
「眠れなくてね。入っても良いかい?」
「あ、ああ……」
クリスがシリウスの部屋を訪ねる事はあっても、シリウスの方から来るなんてあの日以来だ。シリウスは部屋の中に入るとヘッドに寝ころんで、深くため息を吐いた。
「どうしたんだ、シリウス?」
「いや、なに……自分の無力さに絶望していたところだ」
クリスは、夕食の席での事を思い出した。
確かにダンブルドアがシリウスの身を案じているのは分かるが、こうも屋敷に閉じ込められっぱなしというのも流石に可哀相になってくる。
それでなくても、此処はシリウスにとって居心地の良い場所ではない。クリスはシリウスの隣に寝ころぶと、いつもシリウスがしてくれるみたいに、そっと頭を撫でた。