第6章 【寂しがりや】
時々、シリウスは遠い目をして黙ってしまう事がある。いったい何を考えているのかまでは分からないが、過去を思い出して苦しんでいる事は確かだ。
シリウスはタペストリーから目を放しハリーを見た。
「少しでも、外に出て役に立つことが出来れば私も不満はないんだが……ハリーの尋問について行けるかダンブルドアに訊いてみた。勿論スナッフルとしてだが――君を精神的に励ましたいんだ」
「ありがとう、その気持ちだけでも十分だよ」
ハリーは極力笑おうと努力していたが、かえってそれが痛々しく見えた。シリウスはそんなハリーの肩を抱いて微笑んだ。
「心配しなくても大丈夫だ、無罪に決まっている。『国際機密保持法』にきちんと自分の命を守る為なら未成年でも魔法を使っても良いと書いてある」
「でも……もし退学になったら……ここで、シリウスと一緒に暮らしても良い?」
「そうだな……そうなったら、な」
肩を抱いたまま、シリウスが力なく笑った。
そんな2人の間に、入り込めない壁を感じてクリスは心臓がチクリと痛んだ。
――どんなに望んでも、どんなに手を伸ばしても、自分はハリーの1番にはなれないし、シリウスの1番にもなれない。そんな疎外感がクリスを苦しめた。
それ以上2人を見ていたくなくて、クリスはそっとその場から離れた。
午後、サンドウィッチを食べ終わりバタービールで胃を落ち着かせると、再び客間の掃除を始めた。
クリスもみんなと一緒になってガラスの飾り棚を掃除した。飾り棚の中には奇妙で不気味な代物がいっぱい飾られており、シリウスはその殆どを廃棄物を入れる袋に叩き込んだ。
時々クリーチャーが入って来て、隙を見ては捨てられた品物を腰布の中に隠して持っていこうとするので、その度にシリウスが怒鳴ってそれをもぎ取った。
クリーチャーは口にするのも躊躇うほどの悪態をつきながら、部屋を出て行った。
大掃除は1日では終わらず、2週間以上続いた。客間や寝室、大広間、書斎、台所にお風呂場とあらゆる場所を徹底的に洗浄した。
ハリー、ロン、クリス、ハーマイオニー、フレッド、ジョージ、ジニーそしてウィーズリーおばさんの8人がかりで朝から晩まで掃除してやっと人が住めるくらいにはなった。