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ハリー・ポッターと沈黙の天使

第5章 【純血の者】


「いい加減にして頂戴!!!」

 入って来た扉の音に全く気づかなかったが、いつの間にかウィーズリーおばさんが戻って来ていた。戸口に立って、顔を真っ赤にして震えている。

「これ以上は話し過ぎよ!!全員今すぐベッドに行きなさい!!」
「でもっ!!」
「でももへったくれもありません!!今すぐ言う事を聞かないとどうなるか――」

 ウィーズリーおばさんの完全に怒った顔を見て、子供達のみならず大人達もこれ以上話す事は不可能だと判断した。
 ルーピン先生が「皆、部屋へ」と言うと、シリウスも溜め息を吐きながら途半端に頷き、子供たちはそれぞれの部屋へを向かった。
 おばさんは1人1人がベッドに入った事を確認すると「おやすみ」と言って鍵をかけた。

 真っ暗い部屋の中で、クリスは眠ろうと目をつぶったが、とても眠れそうになかった。
 中途半端に情報を手に入れた所為で、緊張感が体中を駆け巡っていた。
 自分の殻に閉じこもっていた頃は、ヴォルデモートの意向など気にしていなかったが、今、奴が仲間以上に武器を手に入れようと目論んでいるのかと思うと、ヴォルデモートの存在感が一気に増してきた。

 『例のあの人』と言われ恐れられてきた最悪の魔法使いが復活した。その事実が、明確にクリスの心に浮かび上がってきた。
 今はまだ身を潜めているが、いつ攻撃してくるか分からない。その時、自分の身は安全である保障はどこにも無いのだ。
 召喚術を利用するため生かされるか、それとも利用できないと知り殺されるか。全てはヴォルデモートのさじ加減一つなのだ。そう思うだけで胸が潰れるような気分がした。

 死にたくない、だけどヴォルデモートの元に下る気もない。
 ぐるぐると感情の波が渦巻く中、ベッドに横たわって頭を抱えていると、またどこからともなく声が聞こえてくるようだった。

『我々に力をかせ』
(………嫌だ)
『さもなければ死あるのみ』
(……嫌だ)
『自分の運命に従え』
(嫌だ!)

 ギュッと目をつぶっていると、誰かが部屋の扉をノックした。てっきりウィーズリーおばさんが本当に寝ているのかチェックしに来たのかと思いきや、聞こえてきたのは優しい男の声だった。

「私だ、クリス。入って良いか?」
「シリ……ウス?」
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