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ハリー・ポッターと沈黙の天使

第5章 【純血の者】


 それまで黙っていたトンクスが、不満そうに口を開いた。

「ファッジがダンブルドアを警戒している所為で、『日刊預言者新聞』では『例のあの人』の話題を出すどころか、ダンブルドアを嘘つきのボケ老人扱い。おまけにハリー、君の事は虚言癖で頭のイカレタ子供って書かれてる」
「でも、どうしてそんな?」
「ファッジはダンブルドアが自分を失脚させようとしていると考えているからだ」
「はあ?」

 いったい何故ファッジがそんな事を考えるのか理解できず、思わずクリスの口から間抜けた声が出てしまった。それを聞いて、シリウスがちょっと笑った。

「ファッジは大臣を務める様な器じゃない。が、以前にも言った通り、君のお蔭でバーティミウス・クラウチの地位が下がり、まんまと大臣職に収まった。前大臣のミリセント・バグノールドが引退した時、ダンブルドアを推薦したがダンブルドアはそれを断った。だが、周りの人間は納得せずダンブルドアを後押しした。ファッジはその時の勢いを忘れてはいない」

 下らない、本当に下らない理由だ。仮にも国のトップに立つ人間が、そんな事で世界の危機をどう乗り越える気なんだろう。クリスは開いた口がふさがらなかった。

「ファッジは自分でも自分の無能さに気づいている。ダンブルドアならいざ知らず、『例のあの人』が復活したなんて大事、とてもじゃないがファッジ自身では収拾が付けられない。だから事を公にするより、隠して無かった事にしてしまう方がよっぽど楽なんだ」

 「だから権力にまみれた人間は駄目なんだ」と、ウィーズリーおじさんが自嘲的に呟いた。
 おじさんも魔法省に勤める役人として、上の人から色々と言われて今まで来たんだろう。薄くなりかけた頭がそれを物語っている。

「でも、そんな馬鹿な事でヴォルデモートの復活を認めないなんて……」
「問題はそれだけじゃない。ファッジは――魔法省はダンブルドアを失墜させようと目論んでいる。現に国際魔法使い連盟の議長職を失った。ウィゼンガモット法廷、つまり最高裁の主席魔法戦士からも降ろされている。他にも勲一等マーリン勲章を剥奪するという話しも出ている」
「でも、ダンブルドアはカエルチョコレートにさえ自分の名前が残れば、気にしていないって言うんだ」

 微笑みながらビルがそう言うと、父であるウィーズリ―おじさんが厳しい顔をした。
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