第5章 【純血の者】
緊張する雰囲気の中、立ち上がっていた全員が改めてイスに座り直すと、おもむろにシリウスがハリーの方を向き口を開いた。
「それでハリー。何が知りたい?」
「ヴォルデモートはどこにいるの?不死鳥の騎士団は、どこまであいつの事を知っているの?」
「奴がどこに潜んでいるかはまだ分からない。だが、奴が思っている以上に色々な情報を掴んでいる」
「例えは?」
「『死喰い人』をはじめ、奴の手下に関する情報だ。ヴォルデモートは手下を集めるのが上手かったが、今回は我々の働きでそう簡単には動けない筈だ」
「でも、服従の呪文を使えば簡単に手下を集められるんじゃないのか?」
「クリス、服従の呪文を使うにはヴォルデモート側にもリスクがある。姿を隠したがっている今、おいそれと服従の呪文を使って自分たちが復活した事を大っぴらにはしたくないはずだ」
それを聞いて、クリスは少し安心した。服従の呪文を使われ、仲間だと安心していた人間から攻撃される心配はなくなった。
しかしファッジ大臣を筆頭に、魔法省全体がヴォルデモートの復活を否定している今、知らず知らずのうちに服従の呪文をかけられ、ヴォルデモートに組する人間が現れるのは時間の問題だとも思った。
「だが確かにクリスの言う通り、服従の呪文は要注意だ。前回もこれで魔法省としてはかなり被害を被った」
実際に魔法省で働いているウィーズリ―おじさんがそう言うと、やはり重みが違う。14年前のヴォルデモート最盛期に、かなり苦戦を強いられたことは想像に難くない。
「姿を隠したがっているって言ったけど、それはどうして?苦労して復活したのに、新聞を見るかぎ不審な死亡記事は無いみたいだけど」
「それは君のお蔭だよ、ハリー」
ここでルーピン先生が、場違いなほどにっこり笑った。ハリーは何故だか分からずキョトンとしている。
「あいつが復活した事を、君が生き証人として直接ダンブルドアに報告した。それも瞬時に。これはヴォルデモートにとって致命的だ。なにせダンブルドアはヴォルデモートが唯一恐れた人物だ」
「そのお蔭で『例のあの人』が復活してから1時間後には不死鳥の騎士団が再結成されたんだ」
「それで、不死鳥の騎士団は何をしているの?」
「主な任務は情報収集、それと団員の確保だ」
「それが厄介なんだけどね」