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ハリー・ポッターと沈黙の天使

第41章 【Angel smile】


「そっ、そうだハリー!もうすぐ誕生日だな。今年は何が欲しい?」

 7月30日は、めでたいハリーの誕生日だ。手持ちの金はあまりないが、出来る限りの事をしてあげたい。
 クリスが明るくそう言うと、ハリーに少しだけ笑顔が戻った。

「それじゃあ、またケーキが食べたいな。ダーズリー家じゃ絶対に食べられないし」
「よし、甘くて頬が落ちるくらい美味しいのを期待していてくれ」
「クリス……料理できるの?」
「したことないが、『魔法薬学』と大して変わらないだろう?」

 平然と言うと、ハリーが力なく笑った。
 でもきっと大丈夫だ、ウィーズリーおばさんや、ロン達が手伝ってくれるだろうし、食べられる物を使って食べられない物が出来るわけがないという、よく分からない自信があった。

 終業式は、ダンブルドアが戻ってきたことで滞りなく進められた。
 当然のことながらアンブリッジは免職となり、先生方にも笑顔と安堵の表情が戻っていた。
 最後のあいさつの演説で、ダンブルドアは去年と同じくヴォルデモートが復活したことと、それに対抗するには団結力が必要だと説いた。

 それが終わると、ホグズミード駅まで馬車で行くために、生徒全員が玄関ホールに集まった。
 大きなトランクを手に、みんな押し合いへし合いながら馬車に乗った。

 人ごみにのまれながら、やっとのことでつかまえた馬車を見てクリスは思わず「あっ!!」と大きな声を上げた。
 今まで姿が視えなかったセストラルが、何故だか分からないがハッキリ見える。
 骨と革だらけの馬に、爬虫類の翼を付けた様な気味の悪い生き物で、長く黒いたてがみがある。こんな不気味な生き物だったら、見えない方がマシだと思えた。

「みんな……」
「何?」
「本当にこれに乗っていったのか?」

 ハリーはともかく、他の皆には見えていないはずだ。それをこのホグワーツから、遥かロンドンまで。
 もう1度、最後にもう1度言おう。なんて馬鹿なんだ。
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