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ハリー・ポッターと沈黙の天使

第41章 【Angel smile】


「どうした、ドラコ。何か用か?」
「クリス……ついに僕と君の友情が終わる時が来たようだな」
「お前がそういうなら、そうなんだろうな」

 クリスは、ただ淡々と言葉を口にした。そうしなければ、身体中を駆け巡る、何か別の感情が溢れて止まらないような気がしたからだ。

「父上をアズカバン送りにはさせない!見ていろよ――」
「残念だが、もう送られている」
「ディメンターは『あの人』の支配下だ。簡単に抜け出せる」
「それじゃあ、その時にまたおじ様に会えるのが楽しみだ」

 後ろに控えているクラップとゴイルが、クリスを殴って黙らせようと拳をバキバキ鳴らしていたが、そんなもの怖くもなんともなかった。
 また、ローブの下で、ドラコが杖を握ったのが分かったが、クリスは召喚の杖を握ったまま何もしなかった。ただ、杖を握った手がひどく汗ばんでいて気持ち悪かった。

 再び予鈴が鳴り、生徒たちは教室へ入って行き、クリス達もそれに従った。
 その刹那、ドラコのブルーグレイの目が、今まで見た事もないくらい冷たくクリスを睨んでいた。
 瞼の裏に焼き付いたその目がクリスを責めたてて、言いようのない苦しみが胸を締め付けた。

* * *

 そしてとうとう、終業式の日がやって来た。これが終われば夏休みだ。
 だがその前に、自分はいったいどこに帰ればいいのか。グリモールド・プレイスか、はたまた「隠れ穴」か。
 クリスが迷っていると、ロンの方からどうするのか説明してくれた。

「クリスはまず、僕の家に帰ってくるようにだってさ。ハリーは……絶対に1度は叔母さんの家に帰らなきゃいけないみたい」
「おお、それはありがたい」
「僕、この日が人生で一番嫌いだな……」

 ハリーは嫌な顔を隠そうともせず、深いため息を吐いた。
 マグルと暮らすなんて、クリスにしてみればちょっとだけ羨ましかったが、叔母さんの家で虐げられているのを知って、クリスは何て言って良いのか分からなかった。
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