第41章 【Angel smile】
ホグズミード駅に着くと、重いトランクを皆はあはあ言いながら、いつもの様に後方部のコンパートメントに積み込んだ。
もうすぐ列車が出発する時間だ。クリスは戻って来た召喚の杖を握りながら、この1年を振り返った。
色々あった、本当に語りつくせないくらい色々あった。
だがのど元過ぎればなんとやらで、どれも結果的には良い経験だったと思えてしまうから、人間は不思議である。
「来年は、どんな刺激的な1年になるんだろうな」
そう独り言ちると、クリスは大きくあくびをして、そのまま窓に頭を持たせかけてそのまま眠ってしまった。
ハリー、ロン、ハーマイオニーが、珍獣を見るような目でクリスの顔を見る。そして3人はクリスを起こさないように額を寄せ合うと、ヒソヒソと話し合った。
「これが本当にヴォルデモートの娘?」
「巷じゃ救済の天使とも呼ばれてるらしいよ?」
「天使、ねぇ。まあ確かに――」
3人はクリスの顔をちらりと覗き見た。そして顔を見合わせ、ため息交じりにこう言った。
「――黙っててくれれば、天使かもね」
タイミングよく、ボーっと列車が汽笛を鳴らした。
何も知らないクリスは満足げに、天使の様な寝顔を浮かべながら、心地よい夢の中で幸せに浸っていた。