第41章 【Angel smile】
「でも本当に良かったわね、クリス。魔力が戻って魔法が使えるようになっただけじゃなく、召喚術まで使えるようになって!!」
「ああ、全ては杖を取り戻してくれたハリーのお陰だ」
「お礼を言われるほどじゃないよ。僕は君の指示に従っただけだし」
「どんな指示を出したの?」
「簡単だよ。合図を出したら魔法で召喚の杖を呼び寄せてくれって」
「その合図……っていうか、隙を作る方法がね。クリスらしいって言うか、らしくないって言うか……」
言いよどむハリーに、一部始終を見ていたネビル以外全員が関心を寄せた。そう言えば、この事はまだ話していなかった気がする。
「なにしたの?」
「ヘッドバットだ」
「へ?」
「だから、頭突きしたんだ。ヴォルデモートに」
笑いをこらえたような、それでいて笑っているような変な呼吸音が聞こえただけで、医務室はそれまでの盛り上がりを失ってしまった。
クリスの大胆不敵さを理解するには、まだまだみんな修行が足りないらしかった。
丁度予鈴がなり、ハリーとクリスは次の授業に出る為、医務室を後にした。次の授業は久しぶりの『魔法薬学』だ。
ここ最近はアンブリッジの『闇の魔術に対する防衛術』が無くなったおかげで、授業が変則的になっていた。
「……僕、出たくないな」
「我慢しろ、ハリー。男には諦めも肝心だ」
「だってどうせ来期は授業を受けられないのに……なんで最後まで授業があるんだろう」
「宿題がないだけマシじゃないか」
そんな事を話しながら地下牢の教室へ続く階段を下りていくと、素早く動く3人組を見た。それはここ最近めっきり影が薄くなった、ドラコとその腰ぎんちゃくのクラップとゴイルだった。
3人はクリス達を見るや否や、素早く近づいてきた。ハリーはすでに杖を手に臨戦態勢を取っていたが、クリスが一歩前に出てそれを制した。