第40章 【蘇る力】
「あなたが、私のシルフ……」
今やクリスの全精神は召喚の杖を介し、シルフと繋がっていた。それは今までにない感覚だった。
これまでは身体中の血管が沸騰するような熱を感じていたが、今は違う。気分は高揚しているはずなのに、心は森のように落ち着いている。
それどころか自分の身体を満たす何かが、気高い神聖なものであると告げている気さえする。
「……とうとう精霊を完全に召喚させたか、だがっ――!」
「――そこまでじゃ、トム」
音もなく静かに扉が開き、ダンブルドアが現れた。それに続き、ファッジを先頭に大勢の魔法使いたちが遠くから部屋の中を眺めている。ダンブルドアを見た瞬間、クリスは助かったと思った。
ダンブルドアは失踪前と変わらず、何処か余裕を感じさせる何かを秘めており、クリス達の間を通ってゆっくりとヴォルデモート達に近づいて行った。
「さあトム、もう終いじゃ。己の住処へ帰ると良い。退くだけの暇は与えてやろう」
「――ッ!行くぞ、ベラトリックス!!」
「はい、我が君……」
ダンブルドアはヴォルデモート達を追おうとはせず、何故かそこから消えるのを黙ってみていた。
それから入り口付近にいた魔法使いたちが大勢押しかけてきて、倒れているムーディ先生や『死喰い人』達を見て悲鳴を上げた。
「これは!?これはいったいどういう――何と言う事だ!?魔法省で戦闘?それにこれは……精霊!?あり得ない、あり得ないぞ、こんなこと……」
「もういい加減に真実と向き合っても良いじゃろう、コーネリアス。これが、今ここに広がっている光景こそが真実じゃ」
「真実?これが――これが!?」
ファッジはどう信じていいのやら、全くもって混乱の極みだった。
その内、その他大勢の魔法使いたちがシリウスの姿を見て、やっと気づいたかのように指をさして大声を上げた。
「ブラック!!――シリウス・ブラックだわ!どうして……?」
「誰か、誰か捕まえろ!!」
「ひいいぃ……こっちに来るなぁ」
「ひどい嫌われようだね、シリウス」
「まあ長い間お尋ね者だったから、仕方がない」
ハリーの言葉に、シリウスは肩をすくめた。それからファッジ大臣の元へ行き、ダンブルドアと共に自分の無実を主張した。
だがファッジは泡を吹くばかりで、まともな対応さえできていなかった。これは時間がかかりそうだ。