第40章 【蘇る力】
ふと気が付くと、クリスの周りには人が集まっていた。みんな初めて見る精霊の神々しさに、うっとりしている。中には写真に収めようとカメラを持ってきている人までいた。
「君!これは本物の精霊なのかい!?」
「写真を撮っても良いかな?出来れば君も一緒に!」
それからが大変だった。出血多量でヘロヘロだったネビルを含め、気を失ったロンやハーマイオニー達は聖マンゴ病院に緊急搬送された。
ルーピン先生やムーディ先生以下闇払いの面々は、同僚に助けられ、その場で意識を回復した。
「よく頑張ったね、本当に偉いよ」
「えっ!?あ、あありがとうごごございますすす」
意識を取り戻したルーピン先生の労いの一言で、クリスは全ての疲れが吹っ飛んだ様だった。
いつもの優しい笑みを前に、クリスは真っ赤になってもじもじしながら下を向いた。
それを見たシリウスは何を思ったのか、俯くクリスの顎をクイッと持ち上げ、人の目が沢山あるというのに恥ずかしげもなキスをしてきた。
これにはハリーも驚きのあまり口を全開にし、反対にルーピン先生はやれやれと肩を落とした。クリスはもう2度目なので、狼狽えもせず、むしろ半ば呆れていた。
「シリウス、淫行罪で捕まるぞ」
「って、ててっててて言うか、何でクリスはそんな冷静なの!?」
「シリウス、前にも言ったが若い子をからかうもんじゃない」
「からかってなどいないさ、クリスは私の可愛いステディだ。留守の間、泥棒に取られないように印を付けておかないとな」
結局ファッジでは話し合いにならず、シリウスは無実の罪が晴れるまで、ダンブルドア預かりになることとなったらしい。
だからと言って流石にホグワーツで暮らすわけにもいかず、少しの間だけまたグリモールド・プレイスに逆戻りだという。
全てが終わりかけた頃は、もう夜が明けて朝日がさしていた。魔法省では色々情報が交錯し、何が何やら訳が分からなくなっている。
そう言えばこんなに騒がしいのに、あのガマガエルそっくりアンブリッジが1度も姿を見せないのが不思議だ。
「ハリー、あのガマガエルはどうした?」
「ああ、あれ?あれはね――」
ハリーは何がおかしいのか、含み笑いをすると、パッとクリスの手を取った。
「続きはゆっくり話すよ。帰ろう、ホグワーツへ!」