第40章 【蘇る力】
この展開にはベラトリックスも驚いたのか、持っていた布ごと召喚の杖が奪われ事に気づくのが少し遅れた。
咄嗟に反対呪文を唱えたが、この呪文はハリーの十八番だ。軽やかに空中でキャッチすると、ハリーとクリスは顔を見合わせて笑った。
「ハハハハハッ!!どこで仕入れた情報だか知らないが残念だったな、偽者め!私と父様の間に、『2人だけの言葉』なんて甘っちょろいものは存在しないんだよ!」
「この……クソガキがあっ!」
クラウスの顔が怒りで歪み、見る見るうちにヴォルデモートの顔に変化した。
ヴォルデモートはクリスを捕らえようと長い腕を伸ばしたが、クリスの身体は、寸前のところでシリウスが後ろに引っ張ってくれたおかげで、虚しくも空を掴むだけに終わった。
「助かった、シリウス!」
「全く、ひやひやさせる!」
「シリウス!援護する!ハリー達を安全なところまで!」
ルーピン先生が杖を構えながら、シリウスとクリスの前に出た。
ハリーは既にハーマイオニーの体を担ぎ、出口に向かって走り出している。その後ろに、よろよろとネビルが続く。クリスとシリウスも、出口に向かって走り出した。
ルーピン先生の援護のお陰で、出口まであと一歩という所まできた。
もう少し、あと1歩で扉に手が届く。そう思った瞬間、何か大きなものが扉にぶつかった。
それは他でもないルーピン先生の体だった。扉を伝って、ルーピン先生の体がズルズルが床に落ちていく。クリスの耳元で、シリウスが唸る様に吼えた。
「貴様!!よくもリーマスを!!」
「シリウス!!」
カッとなったシリウスが、ベラトリックスとヴォルデモートの前に出た。
ベラトリックスの放った赤い閃光が、シリウスのローブの脇をかすめる。その瞬間、ヴォルデモートがにやりと笑ったのをクリスは見た。
――シリウスが 殺 サ レ ル 。