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ハリー・ポッターと沈黙の天使

第40章 【蘇る力】


「止めろ!!」

 クリスが叫ぶと、ベラトリックスは術を止めた。長くて黒い髪を揺らし、その気になればいつでも術をかける準備はあると言いたげな表情をしている。

 クリスは横目で周囲を覗い、頭の中で戦力の計算をした。
 他の『死喰い人』はムーディ先生たちが倒してくれたらしく、全員ピクリとも動かない。だが同時に、いつまた動き出すかもわからない。
 また、残っている相手はベラトリックスと父様の2人。こっちはクリスを入れて4人。
 だがクリスは戦力外だ。おまけにハーマイオニーとネビルという守らなければならない人間もいる。

 どうする、どうすれば無事にホグワーツまで帰れるんだ……。
 その時、クリスの考えを読み取ったように、クラウスが1歩前に歩み出た。

「クリス、私たちも手荒な真似はしたくない。予言をポッターから受け取って、お前もこちらに来るんだ。そうすればこの場は撤退しよう」
「でも、そんな事をしたら……」

 予言がヴォルデモートの手に渡れば、ハリーは死んでしまう。しかしそれでこの場を切り抜けられるなら――いいや、だめだ。それでは問題の解決にはならない。
 それにそちらに行けば、皆とは敵対することになる。それこそ避けなければならない道だ。
 クリスが迷っていると、クラウスがベラトリックスに視線を送った。

「仕方がない、ベラ。あれを」
「……はい」

 ベラトリックスはローブの内ポケットから、1枚の大きな布を取り出した。
 そしてベラトリックスがその布を右手にかぶせ、ゆっくりと布をめくると……なんとその手に握られていたのは、紛れもなく母様の召喚の杖だった。
 クリスは思わず息を止め、それを凝視した。ああ、そうか――それを見た時、クリスの意思は固まった。

「さあ、こちらに来ればこれもお前に戻そう。予言をもってこちらに来るんだ」
「……分かりました」
「そんなっ!?」
「駄目だ、クリス!!」
「おーっと、動くんじゃないよ!この小僧がまた苦しんでも良いならね!」

 止めようとするハリーやシリウス達に向かって声高らかんに笑いながら、ベラトリックスが杖の先をハリーに向けた。
 やはり、道はこれしかない。
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