第40章 【蘇る力】
耳を覆いたくなるようなハリーの絶叫に、クリスの体の奥底から何かが沸き上がって来た――。
助けなければ、ハリーを助けなければ!!しかしクリスが動くよりも先に、シリウスの魔法の方が早かった。
「レダクト!!」
シリウスの呪文1つで、壁に人1人通れるほどの穴が開いた。
シリウス、ルーピン先生、クリスの順に穴を通ると、先ほどムーディ先生達が戦っていた、アーチのあったコロシアムの様な作りになっている部屋に出た。
そこで目にしたのは、アーチの置かれた部屋のほぼ中央で、血まみれになったネビルと、気を失ったハーマイオニーを守る様にして杖を握るハリーの姿。
対するは『日刊予言者新聞』で見た黒髪の魔女、ベラトリックス・レストレンジと――懐かしき父の、クラウス・グレインの姿だった。
「父……様?」
クリスは目を見開いた。やはり、やはり父様は生きていたんだ。
感情が込み上げすぎて、他に何も言葉が出てこない。クリスは1歩、また1歩とクラウスに近づいて行こうとした。
「クリス!簡単に近づいてはいけない、明らかな罠だ!!」
「でも……でも……」
あの彫刻のような白い肌、漆黒の髪、憂いを帯びた瞳、どれをとっても父様そのものだ。良かった、生きていたんだ。生きて、くれていたんだ――。
屋敷が荒らされた事、チャンドラーが殺されたこと、他にも言いたいことが山の様にあるはずなのに、どれも言葉にならない。
少しずつクラウスに近づこうとするクリスの肩を、シリウスがしっかり掴んで放さなかった。
「クリス、落ち着いて考えろ。何故君のお父さんがここに居る?何故『死喰い人』と行動を共にしている?これは罠だ!近づいてはいけない」
「……それは違う。私は『闇の皇帝』に命じられたのだ。死にたくなければもう1度『死喰い人』に戻れと」
「クリス!絶対に罠だ!君のお父さんは死んでいる!あの夜、僕らをかばって死んだんだ!!これは何かの罠だ!!」
「煩い小僧だね!クルーシオッ!!」
クラウスの隣に立つベラトリクスが『磔の呪文』をハリーに唱えると、ハリーは電撃を浴びたように凄まじい断末魔の叫びをあげた。苦痛に顔を歪め、ビクビクと体を震わせている。