第39章 【いざ魔法省へ】
「いったい何なんだ、あれ」
「思考の触手だ。詳しい事は私にも分からない。リーマス、居るんだろう!?」
「こっちだ、シリウス!!」
声のした方を窺うと、ルーピン先生がジニーとルーナの2人の傍にいた。
2人とも失神呪文をかけられたのか、ピクリとも動かない。その上ジニーはかかとにルーピン先生が巻いたであろう包帯をしていた。
「リーマス、ハリーはどうした?」
「すまない、『死喰い人』と応戦している途中で別れてしまった。奥の部屋にネビルとハーマイオニーと一緒にいるはずだ」
「奥の部屋と言うと……」
「ああ、『予言の間』だ」
ルーピン先生だけでなく、シリウスも難し顔をしている。だがそれも一瞬で、直ぐに2人とも騎士団の戦士としての顔に戻った。
『予言の間』とはいったいなんなのだろう。そう言えば魔法省に着いた時にもシリウスが「ハリーに予言を取らせる為の罠だ」とか言っていた気がするが、それと何か関係があるのだろうか。
クリスの中で疑問は膨らむばかりだったが、今は質問をして良い空気ではない。
ルーピン先生とシリウスが共に警戒しながら『予言の間』の扉に近づき、パッと勢いよく扉を開けた。
そこは既に激しい戦闘があったのだろう。背の高い棚が軒並み倒れて、足元にはガラス玉の欠片らしきものが沢山転がっていた。
「ハリー!?ハーマイオニー!?ネビル!?」
「静かに。敵に見つかるかもしれない」
クリスはつい不安でハリー達の名前を叫んでしまったが、確かにルーピン先生の言う通りだった。
ルーピン先生を先頭に、3人は足の踏み場を探しながら慎重に前に進んだ。幸い敵の気配は無かったが、同時にハリー達の気配もしなかった。
「もうここにはいない様だ、元に戻ろう。ムーディたちも心配だ」
「ああ、そうだな」
「そう言えば、ハリーが言っていたな……棚に小さなガラス玉が沢山飾られた部屋に、シリウスがいるって。もしかしてここが例の武器が隠された部屋なのか?」
クリスの疑問に、シリウスとルーピン先生は顔を合わせて黙ってしまった。どうやら武器についてどこまで話して良いのか考えあぐねているようだ。
だが、ここまで来たのならもう教えてくれても良いだろう。クリスは駄目押しをした。