第39章 【いざ魔法省へ】
「シリウスはそっちの扉を!私はこっちを開ける」
「分かった。クリス、準備は良いな?」
「ああ!」
パッと扉が開くと、そこは既に戦場だった。フードをかぶっているせいで顔は見えないが、多分アズカバンを脱獄した連中と思われる『死喰い人』が10人近くいる。
先行していたムーディ先生達が応戦しているが、数が圧倒的に違う。一瞬でも気を抜いたら、それが死につながるだろう。
「クリス、絶対にそばを離れるな!」
「分かった!」
部屋は中央に向かって窪んだコロシアムの様な作りになっていた。シリウスが階段の上がら、『死喰い人』に向けて赤い閃光を放った。恐らくマクゴナガル先生を気絶させたのと同じ魔法だ。
閃光は『死喰い人』の背中に当り、その場にバタリと倒れた。
シリウスはもう一度同じ攻撃をしたが、今度は少し狙いがずれて、部屋の中央にある石造りのアーチに当たって縁が少し崩れた。
「ムーディ!ハリー達は!?」
「恐らく隣の部屋だ!先ほど悲鳴が聞こえた」
「分かった!クリス、リーマスが行った部屋に行くぞ!!」
言うが早いか、シリウスはもう走っていた。何もできないクリスは、ただ約束通りシリウスの傍を離れまいと必死になって後を追った。
今度の部屋はかなり広い部屋で、緑色の液体に満たされた巨大な水槽のある部屋だった。ただ水槽の中には不気味に光る脳みそが幾つも漂っていて、ロンがその1つを掴んでいた。
「ロン!無事だったのか!」
「あ~、クリス。久しぶりだね~。見ろよ~この脳みそ、結構可愛くないか~?」
どんな呪文を受けたのか、明らかにロンの様子がおかしかった。
心配したクリスがロンに近づこうとすると、シリウスが間に入って止めた。すると見る見るうちにロンの掴んだ脳みそから奇妙な触手が伸び、ロンの体に巻き付いた。
「クリス、見てみろよ。ほら――あれ、おかしい――嫌だ、止めろ――止め、止め、止めろおおお!!」
触手が絡みつき絶叫するロンの体を、シリウスが力づくで抱き上げると丸ごと水槽にブチこんだ。
すると脳みそはスルスルと触手を縮め、ロンの体から離れて、また水槽の中を漂い始めた。
シリウスはロンを水槽から引っ張り上げると、ぐったりしたロンを床に寝かせた。