第39章 【いざ魔法省へ】
「シリウスはヴォルデモートの罠だって言っていたけど、いったい今何が起こっているんだ?教えてくれ、私は真実が知りたい!おためごかしはもう沢山だ!!」
「そうだな……この惨状からするに、予言が無事である確率も低そうだから、あえて話そう。予言とは、ヴォルデモートがハリーを“完全に殺す”為の『知識』だ」
「ち……知識?」
「そう。ヴォルデモートは15年前、予言によってハリーに破滅寸前まで追いやられた。去年再び肉体を得る事に成功したが、ハリーを殺すには至らなかった。何の因果か、ハリーは幾度となくヴォルデモートと対峙しながら生き残っている。これはヴォルデモートにすれば多大なる屈辱だ。だから奴は何としても予言を手に入れようと画策していたんだ」
知らなかった、ハリーが予言によって守られてきただなんて。これまでハリーが生き残れたのは、ハリーの力とちょっとした幸運によるものだと思っていた。
しかしだとすれば、その予言がヴォルデモートの手に渡ったら、ハリーは今度こそ確実に殺されてしまう。だから騎士団のメンバーはこの1年間、ずっとそれを死守して来たのだ。
「でも、何故ヴォルデモートは『服従の呪文』を使って予言を手に入れようとしなかったんだ?」
「予言はそれに関係する人間にしか触れる事が出来ない。つまり、ハリーとヴォルデモートだ。だからヴォルデモートは夢を使ってハリーを魔法省におびき寄せ、予言を手に入れさせようとしたんだ」
そうか、流石のヴォルデモートも、闇払いや優秀な魔法使い達が大勢集まる魔法省に、のこのこやって来るほど馬鹿じゃない。
だったら傷痕を介して意識が繋がっているハリーを騙し、奪い取る方が簡単だ。そしてハリーはヴォルデモートのその企みに、まんまとはまってしまったという訳か。
大人たちがあれほどハリーに『閉心術』を会得させようとしていたのは、正にこういう事態を避けるためだったのか。
それさえ分かっていれば、クリスだって『閉心術』を会得するよう強く説得したのに……。
悔やんでも悔やみきれないが、今はそんな事よりとにかくハリーと合流しなければ。
ガラス玉だらけの部屋を出て、また巨大な水槽のある部屋に戻ると、どこからともなく悲鳴が聞こえてきた。
それは普通の悲鳴ではなく、この世全ての苦痛を味わったかのような、壮絶なハリーの悲鳴だった。