第39章 【いざ魔法省へ】
「頼む、シリウス。私も連れて行ってくれ。皆が危険にさらされているのに、1人だけ安全な場所でくすぶっているなんて出来ない!!」
その言葉に、シリウスは何も言わずにジッとクリスを見つめた。
シリウスの瞳は強い力を持っていた。しかし、それ以上にクリスも力強い瞳でシリウスを見つめ返した。
シリウスなら分かってくれるだろう、この、無力な自分の忌々しさを。
ややあって、シリウスはおもむろに口を開いた。
「私の傍を離れないと約束できるか?」
「誓う。私の全てをかけても良い」
「分かった、それじゃあついて来い」
「シリウス!!?」
叫び声をあげたのはルーピン先生だった。
当たり前だろう、ヴォルデモートが罠を張っているのは確実なのに、そこにまだ学生の女の子を連れて行くなんて。
それでなくともヴォルデモート率いる闇の軍勢は強敵だ。誰かの身を守りながら片手間に戦える相手ではない。そんな事はシリウスだって百も承知だろうが、シリウスは意見を変えなかった。
「独り安全なところで待つことがどんなに苦しいか、私には分かる。大丈夫だ、クリスの身は私が必ず守ってみせる」
「しかしシリウス!!」
「リーマス、これはもう決めた事だ。それに急がないとハリー達に危険が及ぶぞ」
「……っ私は止めたからな」
「ああ、いつもありがとうリーマス」
こうして結局、クリスもついて行くことを了承してもらった。
3人はエレベーターで9階まで降り、暗い廊下にたどり着いた。目を凝らすと、奥に扉が1つある。
ムーディ先生たちが先に行っているはずだが、何の音もしない。そう思っていたら、突如この世の苦しみの全てを詰めこんだような叫び声が聞こえてきた。
「リーマス!!」
「ああ、分かっている!」
2人はとっくに杖を構えていた。走り出したシリウス達の傍を離れないよう、クリスも急いで後を追う。
扉を開くと、円形の部屋に出た。何もかもが真っ黒い部屋で、壁一面に扉があり、いくつかに目印の様な×の焼き印がついている。
この扉のどこかに、ハリー達がいる。そしてヴォルデモートも――。そう思うと、胸がざわついた。